2010/07/31

インプレッション  Vol.336 BMW 5シリーズ


7年ぶりモデルチェンジ、燃費改善と大型化された車両







 ドイツのBMWの中核となる中型4ドアセダンの5シリーズが、
7年振りのモデルチェンジをした。

新車登場の例に漏れず車体は大型化したが、
535iと呼ばれる3,000ccエンジンのターボチャージャー付きで、
従来の540iに比べ約40%の燃費改善を果たしているという。

これは、排気量を以前より小さくすると同時に、
ターボチャージャーという過給機を装備して馬力を補う手法を
採り入れた成果といえる。

 今回試乗をしたのは、もっとも廉価な528iだ。

この車種のみ、BMWとして国内初のエコカー
減税対象車となっている。

購入時の取得税と、自動車重量税が約50%減税となり、
合計減税額は約18万3200円。

これに新車購入の優遇として10万円の補助金が適用
されるため、28万円強の優遇が9月まで受けられる。

さらに、登録から13年を超えたクルマの廃車を伴う
新車購入となれば25万円の補助金になることから、
最大では43万円強の優遇になる。

 新型528iは、
直列6気筒3,000ccエンジンを搭載する。

535iと同じ排気量だが、
528iにはターボチャージャーがつかない。

それでも、最高出力は258馬力であり、
車両重量1,770kgの車体を発進・加速させるのに
なんら不足はない。

8速オートマチックのきめ細かな変速により、
エンジンを不用意に高回転まで回すこともなく、
走行中の室内は常に静かで、
前後席での会話も不自由しない。

低速で落ち着かない運転感覚





 ただ、若干気掛かりなのは低速での手応えの
不確かさだった。

理由は、60km/h以下の速度では、
小回りを利かせるため後輪をステアリング操作と
反対方向に操舵するためだ。

これにより落ち着きのない様子を中低速で示し、
運転しにくいと感じさせる。

 一方、60km/h以上になるとステアリング操作と
同じ向きに後輪を操舵する制御に切り替わるため、
運転感覚は落ち着きを得て、安心感が高まる。
それは100km/hの高速走行でも同じだ。

 低速での不安な心持は、
実は7シリーズでも同様だった。

新型5シリーズは、前後タイヤ間が3メートル近くもある、
いわゆるロングホイールベースの車体で、
これによって後席は、ゆったりとした大きな座席とともに
非常に快適な座り心地となっている。

しかし反対に、車体の長さによって小回りが利きにくく
なってしまう恐れがある。

それを後輪操舵の手法で解消しようとしているのだが、
クルマの走行安定性は後輪が担っており、
その後輪が操舵され、向きを変えるということは、
走行安定性を失わせかねないのだ。

とくにステアリング操作と反対へ後輪を向かせる制御が
必ずしも適切でないことは、
日本の自動車メーカーが90年代に実用化してみて、
以後採用を控えていることに表れている。

 せっかくの新車が、この後輪操舵のおかげで
良い印象を残せなくなってしまっているのが惜しい。

 それ以外、新型528iは、終始快適な乗り心地と、
必要にして十分な動力性能を示し、
エコカー減税対象車の恩恵もあって、
もっとも廉価な車種といっても、
とても満足度の高いグレードであると思うのである。

 前の5シリーズでは、低速と高速でステアリングギア比
が切り替わる新技術を搭載したが、
やはりその効果が極端であるため違和感を残し、
後に登場するほかの車種では改善が進んだ。

新型5シリーズも、新しい技術へ挑む意気込みが
あったはずだが、今のままでは完成度は高いとは
いえない。

一日も早い改良が進み、新型5シリーズ本来の
よさを存分に味わえるクルマに仕上がって欲しいと願う。

(読売新聞)

関連URL : http://www.bmw.co.jp/jp/ja/newvehicles/5series/overview.html


コメントは受け付けていません。

おかげさまで創業75周年を迎えます

" class="full" alt=""/> " class="thumbnail" alt=""/>

メカニックの部屋(修理事例) 

サイト内検索


Go Top