2010/08/08

インプレッション Vol.339 プジョー 3008


機能が充実したクロスオーバー







 フランスのプジョーから、まったく新しいクルマが登場した。
プジョー3008は、近年はやりのクロスオーバーと呼ばれる
車種で、セダンの爽快な運転感覚と豪華な室内、
そしてミニバンのような広い車内と視線の高さ、
SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)を思わせる
力強い姿といったそれぞれの特徴を、
一台のクルマの中に詰め込んだ新車だ。

 プジョー3008は、5ドア・ハッチバックの308と
ほぼ同じ全長と全幅だが、車高だけは1.6m以上と
かなり背が高い。

私の身長が167cmだから、写真を見てもらえば、
その背の高さが想像つくだろう。

 運転席に座ると、目線がかなり高いのがわかる。
とくに高速道路などでは、遠くを見通せることで、
ミニバンなどに乗りなれた人には安心感があるだろう。

また、後席は、その背の高さを利用して座席が高く、
床と座面の差が大きいため、足を下ろす姿勢で
座れるので、体が安定してとても楽だ。
もちろん、足元も十分に広い。

 室内の雰囲気は、上級4ドアセダンのように
上質さと落ち着きがある。

唯一、クロスオーバー車だと目に訴えかけるのは、
センターコンソールの助手席側に設置された
ハンドグリップだ。
未舗装路などで車体が揺れたとき、
ここを手でつかんでいれば体を支えられる。

 車体後ろのトランクの開閉は、
上下2分割でバックドアが開く方式になっている。
そこに現れる荷室の床は、床板を差し替えることで
高さを3段階に調節でき、一番上に床板を設定すれば、
リアウィンドウから中を覗かれても下段にしまった
荷物を隠すことができる。

一方、その高い床に載せた荷物は、
バックドアの上へ開くハッチバック部分のみ開ければ
取り出すことができる。

後席は、レバーひとつで背もたれを前方へ倒すことができ、
同時にクッションが自動的に下がるので、
平らな荷室が簡単に広げられる。

 人と荷物を様々に運びたいという欲求を、
多彩な手法で満たしてくれる利便性をプジョー3008は
備えており、これ一台あれば何でも用が足せると思った。

力強い走りと安定した運転感覚

 さて、いよいよ走り出そう。

エンジン排気量1,600ccと聞いて、
背が高く大柄に見える車体に力は足りるのだろうか
と思ったが、発進から力強い勢いで走りだした。

ターボチャージャーによる過給機を備えるので、
高速道路での追い越しも何ら支障はない。

さらに、3008からプジョーではじめて搭載された
6速オートマチックトランスミッションにより、
こまめにギアチェンジが行われ、
燃費も悪くなさそうだ。

エンジンを常に低回転域に保とうと
ギアチェンジされるので、
走行中の室内はとても静かで快適だ。

 人の背の高さほどもある車高によって、
カーブでふらつかないかとの懸念が
あるかもしれないが、リアサスペンションに
車体の傾きを抑える機能が採用されており、
運転感覚はまさしく4ドアセダンと変わらない
安定を感じる。

安全運転に役立つヘッドアップディスプレイ







 新たな機能として便利だと思ったのは、
標準装備のヘッドアップディスプレイだ。

ドライバー正面のフロントウィンドウ手前に、
10cm四方ほどの透明の表示板があり、
ここに速度や、クルーズコントロールの設定状況、
また前車との車間距離の警告などが表示される。

目線をフロントウィンドウから外すことなく
大切な情報が得られるので、
前方不注意とならず、安全運転に役立つ。

 ヘッドアップディスプレイの表示のなかでも、
前車との車間距離の警告については、
他車と異なる独自性が採り入れられ、
その機能に感心させられた。

通常、車間距離は何メートルという距離で
表示されるが、プジョー3008は、
何秒という時間表示になっている。
そして、車間距離が2秒を切ると、
警告表示に切り替わる。

 距離ではなく時間表示としたのは、
ドライバーは運転中、
前車の挙動の判断に1秒の時間を要し、
危険と判断した際の回避行動に1秒を
費やすというプジョーの見解から、
2秒という時間を保って車間距離を管理すれば、
追突事故等の危険を回避できるとの理由による。

たしかに、車間距離では、
速度によって安全な距離が異なる。

だが、時間管理なら、
人の行動を基準としているので、
速度変化にも対処可能だ。

クロスオーバー車としての利便性や、
運転のしやすさ、快適性への満足度はもちろん、
安全の考え方にも、単に人と違うことをやると
いうのではなく、本当に正しい機能とはどういう
仕組みであるかを考え抜いたプジョーの取り組み
を存分に凝縮させた3008であった。

機能が充実しているから、
色々写真も撮りたくなった。

そんな楽しい試乗だった。

               (読売新聞)

関連URL : http://content.peugeot.co.jp/3008-debut/


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