2012/06/29

CVT(無段変速機)の仕組み、メリットは?


Q

最近、車の仕様を見ているとCVTという言葉がよく出てきます。「無段変速機」のことだそうですが、どういう仕組みのものですか? また、AT(オートマチックトランスミッション=自動変速機)と比べると性能面ではどうなのでしょうか?(@CARS編集部)

A

変速機(トランスミッション)はエンジンから伝わる回転を走行状況に応じて変速し、タイヤに伝えるためのものです。CVTはContinuously Variable Transmissionの頭文字をとった名称で、直訳すれば「連続して変わる変速機」となります。歯車を使うオートマチックやマニュアルトランスミッションと異なり、CVTは変速比を段差なく滑らかに変えられることから、無段変速機と呼ばれます。

 







プーリーとベルト(画像提供:ジヤトコ)









CVTの仕組み(画像提供:ジヤトコ)

 代表的なCVTは、2つの「プーリー(滑車)」に「ベルト」を掛けた単純な構造です。プーリーは、ひとつがエンジン側に、もう一方はタイヤ側に配置されています。興味のある方は下記のサイトで構造を確認してみてください。

 <変速機の開発、製造を行う「ジヤトコ」(本社・静岡県富士市)のHPより>

 円錐状のディスク2枚を組み合わせた形のプーリーは、幅を狭めたり広げたりできる仕組みになっています。ベルトが通る溝の断面はV字形になっていて、プーリーの幅を広げると、ベルトは中心に近いところ(Vの字の下の方)を通り、プーリーの直径は小さくなります。逆にプーリーの幅を狭めると、ベルトはせり上がり、直径は大きくなります。

 通常のオートマチックは、歯車の大小を使って変速しています。これに対し、CVTはプーリーの直径に応じて変速するため、段差なく無段階に、滑らかな変速ができるのです。

 例えば、坂道を上る時、通常のオートマチックで2速ギアではエンジンが回り過ぎてしまうのに、3速ギアを選ぶとエンジンの回転が下がり過ぎて力不足になるといった経験をしたことはないでしょうか。こうした場合でも、CVTは2.5速というような変速状態をつくりだすことができるので、エンジン回転が上がり過ぎず、それでいてちゃんと力を発揮でき、坂道を快適に上ることができます。

 エンジンの効率がよく、力を発揮しやすい回転数をいつも利用できること、オートマチックでギアが切り替わる時のようなショックもなく、滑らかに加速できることが、CVTの長所です。

 ところが、CVTにも短所はあります。CVTは金属のプーリーとベルトを使っているので、全体が重くなる傾向にあります。また、プーリーの幅を変えるために油圧を使っています。油圧はエンジンの力を利用し、ポンプを回して発生させるので、エンジンにロスが生じることになります。

 ほかにも、エンジンの力の出やすいところまで、まず回転を上げてから、後追いで速度が上がる傾向があるため、加速した時に違和感を覚えることもあります。スクーターのトランスミッションにはCVTが使われているのですが、加速する際、ウィ~ンッと思い切り大きいエンジン音を出しながら走っていく場面を見たことはありませんか。それがまさにCVT特有の加速なのです。

 それでも、一番力を発揮しやすい状態でエンジンを使うという点でCVTは有益であり、採用するクルマは増えています。また、加速時の違和感を解消する制御、すなわち一気にエンジン回転を上げすぎないようにする工夫も今のクルマには盛り込まれています。

 CVTのこうした長所をオートマチックでも応用しようと、近年は6速、7速、あるいは8速といった多段式が増え、歯車を使いながらも無段変速に近くなるよう変速比の差を小さくすることが行われています。また、クラッチを2つ使って変速のショックを解消する方式も一部で採用されています。

 CVTの普及に伴い、オートマチックも多段化などによって効率を高める開発が進んでいます。CVTとオートマチックは互いに競争しながら進歩を続けているのです。

 (読売新聞)


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