奥田 靖己さん
ゲスト 奥田 靖己さん<プロゴルファ->
ホスト 氏田 耕吉 (ウジタオートサロン代表取締役)
平成5年の「日本オープン」では尾崎将司を抑えて日本一になった。
プロゴルファーとしての生活、「全英オープン」を目指す心構え、アマチュアがスコアを上げる秘法などをうかがいました。
JAPAN GOLF TOUR
http://jgto.org/
ゴルフも人生も、ある程度のレベルに達した後は 時に「ゆるむ」あるいは「ゆるめる」ことが、次の発展につながる
ナイスショットではなく、ミスショットを意識して何回も打てるようになれば、スコアは確実に上がる
氏田 小さい項からお父さんにゴルフを教えられ、「甲南大学ゴルフクラブ」で活躍された後に、プロゴルファーの道を進まれたとお聞きしていますが、奥田さんにとってゴルフはどういう存在ですか。
奥田 私生活を含めて、生きることがイコールゴルフです。たとえば早く動くものを見るととても興味が湧いてきて、それを通じて「ゴルフについて何か分かりたい、追求したい」と思う感じです。
氏田 プロゴルファーとしては常にそういう姿勢をもっておく必要があるのでしょうね。
奥田 自分で持とうとしても持てるものではないと思います。ゴルフが何よりも好きなのです。雪の日も嵐の日もゴルフをしたいのです。結果が良いから「幸せ感」を感じるのでなくて、「ゴルフができる」ことに「幸せ感」を感じるのです。
氏田 そういうことが一番大切なことなのでしょうね。
奥田 ずっと死ぬまで続けていって、プロゴルファーとしてダメになつてもゴルフにかかわることでずっと生きて行きたいと思っています。
氏田 先日、奥田さんの応援に一緒に行った私の息子が「どうしてあんなに上手にできるのだろう」と大感激していましたけれど、私達はどうやればゴルフが上手になるのですか。
奥田 無駄をたくさんやることです。パシッといい所へ決めるのは気持ちがいいのですが、それをやるためには無駄をたくさんやらないと決まりません。アマチュアの人は練習場などで「ナイスショット」ばかり打ち込もうとやっきになっていますが、それでは意味がありません。ナイスショットでなく、ミスショットを意識して何回も打てるようになれば、ミスショットがなぜ出るのかがわかるのです。
悪い球が出たら「どうしてそうなったのか」もう1回打ってみればいいのです。ところがアマチュアの方は悪い球はもう打ちたくないので、打たないようにしようとするので、また出てしまうのです。ということは「その悪い球について分かっていない」ということです。練習の時に悪い球を何回も打ってみることによって、その悪い球が分かって初めてその球は打たなくなって、スコアは確実に上がります。
アマチュアの方が伸びないのはあらゆる球を練習していないからなのです。
氏田 恐れずムダや失敗をやって初めて成功につながる-人生やビジネスと同じですね。
奥田 人間はきれいな所ばかり見せようとするのですが、全部さらけ出してそれを肯定して、そのままの生き方で歩いていくことが大切ではないでしょうか。ゴルフも同じです。
『全英オープン』に出て優勝することが 目標で夢 自分の内側を、 感覚を見る 感性を大切に
氏田 プロゴルファーの世界は厳しい世界だと聞いていますが。
奥田 約三千人のプロがいますが、そのうちツアーを目指している人が千人から千五百人ぐらいで、「シード選手」と言って「試合に来なさい」という権利をもらっている人が七十人です。賞金で生活できるのはその七十人だけです。
氏田 その中で生き残っていくためには、どういうことを心がけておられるのですか。
奥田 他のプレーヤーとの競争や、フォームなどの目に見える所に気を取られるのでなく、自分の感覚、自分のゴルフに目を向けることです。
「これだけの気持ちで振ったらどれだけのことが出来るか」「今の自分の状態であればこういうことが出来るだろう」というバロメーターをずっともっておけば上位二十位からは外れないでしょう。そういう感覚の問題が勝敗を分けます。
氏田 これから目指しておられる目標は何ですか。
奥田 十六年前からプロになって、日本一にはなりましたが、世界一にもなりたいですし、さらにゴルフ発祥の地イギリスの「全英オープン」に出て優勝することが目標で夢です。
氏田 全英オープンにはどうすれば行けるのですか。
奥田 日本での成績が上がれば行けます。
「日本のツアーの賞金ランキング三位以内」「春先の六試合の上位五人」という規定があります。きっと行けると信じています。
氏田 そのために今年は「こういうことをしよう」という方針はありますか。
奥田 今年は、どんな練習をするかを決めてやる、いつものやり方を止めようと思っています。ある程度のレベルまで達するとそれから先は、頑張れば頑張るほどだめな時もありますし、「これぐらいでいいや」と思っている時にうまく決まる時もあります。「どういう練習がいいか」「どういう練習が悪いか」は分かりません。「どれだけ自分の内側を、感覚を見ることができるか」という感性の問題です。
その感性を出すような方向へ今年は自分を持って行こうと考えています。たとえば天候の悪い日にゴルフ場に行ってやってみればフォームだとか何とか言っていられませんから、「こんなものか」という感覚が生まれるのではないかと思うのです。
練習を「やりたかったらやるだろう」「無駄だと思ったらやらなくてもいい」、どうなるか分からない、オフの予定も何も無い、そんな感じで一度やってみたいのです。
一般に「ゆるむ」といけないと言われていますが、「ゆるむ」あるいは「ゆるめる」ことが大事だと思います。もちろん頑張った人がゆるむことが必要なので、頑張らない人がゆるんだのでは何もありませんが。
氏田 私がいつか仕事で忙しくて、いろいろあってパニックになって「いつ精神的につぶれるか分からない」と言うと、家内が「いっそのこと、つぶれるまでなにもしないでいたらどうなの」と言ってくれたのですが、同じ意味ですね。
奥田 そうでしょうね。計画を練らないで突発的にやったり、思い切りゆるめたり、「なまくら」をするということは、ゴルフでも人生でも大切なことではないでしょうか。
氏田 ありがとうございました。