<作者紹介> 毎月全国の有力中古車販売企業のトップとミーティングを行い、ユーザーが安心して車を選べる店舗づくりを研究している。10年間に調査した店舗は1000店舗以上。悪質な店やメーカーからの圧力を避ける為、素姓を隠して全国を飛び回っている |
●<第1回:はじめに> |
最近、中古車選びに失敗する人があとを絶ちません。 「事故歴がある車をだまされて買ってしまった。」 「メーターがかなり戻されていて、乗ってみたらヨレヨレだった。」
「アフターサービスが悪く、他の店で修理するハメになった。」 実際、私のまわりにも、知っていれば防げた単純なミスをしてしまっている人が数多くいます。そんな時、なぜ中古車を買う前に私に相談してくれなかったのかと思うことがよくあります。 あなたのまわりにも中古車に対する不満を口にする人はいませんか? いくら中古車といっても決して安い買い物ではありません。そしてなにより、生活の一部として接していくものですから、一回のミスチョイスが、その後何年間もの悩みのタネにならないとも限りません。
なにより、乗る人の命にも関わる選択なので、最低限知っておくべきことは覚えておいて欲しいのです。 私は最近まで、テレビでいうような悪徳業者などそんなにいるものではないと思っていました。あれはテレビの過剰放送だ、と思っていたのです。 しかし、私の身の回りに実際に騙されたり、困っている人達を目の当たりにして、とても人事のように思えなくなったのです。 私の願いは、幸せなカーライフを送っていただくことです。もちろん、そのお手伝いを私たちが出来たら、それはとても嬉しいことです。 しかし、まずは、一人でも多くの方が自分で納得のいく車選びをして頂きたいと思うのです。そのために、私はこのレポートを書きました。
このレポートが、皆さんの充実したカーライフに少しでもお役に立てることを心より願います。
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●<第2回:中古車選びに成功する人、失敗する人> |
「車が欲しい」と考えている方は大勢います。
「彼女をとなりにのせてドライブしたい」
「子供がうまれるから、もう少し大きな車にしたい」
「自分だけのセカンドカーが欲しい」 その理由はさまざまですが、安心して乗れる車に乗りたいという思いはみな同じです。 そう思って、いろいろと雑誌をあさってみたり、ネットを検索したり、とりあえずディーラーめぐりをしてみるのですが、どうもしっくりいかない、あるいは、どの店で買ったらいいのかわからない、などと思っていらっしゃる方はけっこういるのではないでしょうか? 一方で、購入した店にも、買った車にも大満足という方もいらっしゃるのに、もう一方で、満足どころか状態の悪い車を高値で買わされてしまったり、営業マン にしつこく勧められて買ったのはいいものの、納得がいかず結局3ヶ月で買い換えてしまったり・・後悔されている例も枚挙に暇がありません。 それでは、その違いはどこからくるのでしょうか? なぜ欠陥車をつかまされる人がいる一方で、充実したカーライフを送れる人がいるのか是非考えてほしいのです。その境界線はどこにあるのか、と。 それを考えてもらうために、今回私は、あまり業界の人間が話したがらないような問題点や、失敗しないコツなどをお教えします。
<第3回に続く>
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●<第3回:これだけは知らないといけないお店に行く時の五つの心構え①> |
ポイント1 安いからといって飛びつかない これは聞いてみれば当たり前のことですが、「これは安い!」と思ってその場で買っては見たものの、実際に乗ってみたら欠陥車だったということが少なくありません。 安い車にはそれなりに理由があるのです。 車の業界というのは「相場」というのが非常に発達していて、全国どこにいっても同じ条件の車の値段が、そんなに変わることはないのです。ですから、相場を知っている私たちからすると、「怪しい」と思うような車が、知らない人にとっては「目玉車」に見えてしまうのです。 もちろん、その会社がたまたま十周年記念だったとか、なにかのキャンペーン中だったということもありますが、ただでさえ車を見ている時は軽い興奮状態にあるのに、ましてや欲しい車が格安で売っていたら一度に舞い上がってしまうのは当然です |
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●<第4回:これだけは知らないといけないお店に行く時の五つの心構え②> |
ポイント2 「とりあえず行ってみる」はしない こんな事を書くと、「店で車を選んではいけないのか!」とお叱りを頂いてしまいそうですが、もちろんお店でタップリ悩むのは大いに結構なことですし、また、お店はそのための場所です。 でもここで言いたいのは、車種はおろか、車の使い道も、予算も、はたまたどんな機能が欲しいのかも決めないままにお店に行くのは危険だということです。これでは、営業マンの思うツボになってしまいます。 中古車はいわゆる「一物一価」の商品です。ですから、中古車選びは自分が欲しい車と、店にたまたま置いてある車の条件がどれくらい一致するかということなのです。なのに、自分がどんな車が欲しいのかを全く考えていかないと、そのたまたま置いてある車を買わされてしまうハメになるのです。 店に行く前にまず考えて欲しいのは、「車でいったいなにをしたいのか?」ということです。 毎日の通勤に使いたいのか、週末のドライブのためなのか、子供の送り迎えのためなのか、理由は人それぞれでしょうが、必ずその用途にあった車というのはあるものです。 参考までに車種を決める為の三種類の要素をご紹介しておきます。 1 車の用途(通勤重視、ドライブ重視、買い物重視等) 2 予算 (いくらまでなら出せるのか) 3 妥協点の優先順位 (自分にとってゆずれないところはどこか) 要はこの三点を自分の目的に合わせていけばいいのです。よく、最初からこの車でないと駄目だという方がいらっしゃいますが、始めから絞ってしまうと本当の 意味で自分にあった車に気づかないまま他の車を購入してしまい、買ってからその間違いに気づくという方も少なくありません。
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●<第5回:これだけは知らないといけないお店に行く時の五つの心構え③> |
ポイント3 維持費を忘れない 車を買うときに忘れがちなのが、維持費の問題です。 意外と多いのが、とりあえず車を買うことだけに気がいってしまい、月々の維持費のことを全く考えずに購入してしまって、後で後悔してしまうケースがあります。 車の維持費は、排気量や、年式によって意外に大きく変動するものです。 具体的には、駐車場代、ガソリン代、保険代、車検代、税金、オイルなどの消耗品代、あと、年式の古い車の場合、修理代などもかかってきます。 ひとつひとつは小さくても、まとまってくると、案外大きな出費です。車は安かったけれど維持費がかかりすぎてしまい、泣く泣く手放すハメになってしまうのです |
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●<第6回:これだけは知らないといけないお店に行く時の五つの心構え④> |
ポイント4 あれもこれも欲しがらない 接客をしていると、よく、予算的にぎりぎりの車を要求される方が少なくありません。 しかし、実際の予算と要望の車がぴったり一致するということはほとんどなく、たいていの場合、何らかの形で妥協せざるを得ないのが現状です。 具体的には車体の色、年式、車検の有無、カーステレオなどのオプションのことです。これを例えば年式は少々古くてもいいが、色は青でないと嫌だ、とか、あるいはMDプレーヤーはいいけど、CDプレーヤーは絶対欲しい、という具合に優先順位をつけておくことが大切です。 そして、本当にそれが欲しいかどうか、必要かどうかを考えてみましょう。 よくあるのが、「どうしてもナビ付きが欲しい!」とおっしゃっていても、よくよく聞いてみると普段の道はほとんど把握しているし、ナビをつかわなければならないような場所には、半年に一度くらいしか出かけない事が分かり、あっさりとあきらめてしまうのです。
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●<第7回:これだけは知らないといけないお店に行く時の五つの心構え⑤> |
ポイント5 営業マンに主導権をとられない いくら雑誌を読んで詳しくなっても、やはり毎日その現場にいるプロの営業マンにはかないません。 そして、もし優秀な営業マンに出会えたら、それだけであなたの悩みのほとんどはたちどころに消えてしまうでしょう。 しかし、その一方で多くのお客様が営業マンを毛嫌いしているのも事実です。 なぜなら、営業マンというと、何かと隙をうかがっては自分になにか買わせようとしているのではないか、あるいは騙そうとしているのではないかと思っているからでしょう。 確かに、そのような人もいるのは事実です。 だからこそ、自分の希望をある程度把握し、それについて親身に相談に乗ってくれる営業マンから買うようにしましょう。 あなたが何も考えず、営業マンに任せていると、どんな営業マンでも売り込むしかなくなってしまうのです。 |
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●<第8回:悪質店にだまされるな。避けておきたい基本の失敗①> |
「失敗した!」という声が聞こえてきた時に、その原因を聞いてみると、お店側が原因になっているものとしては、実はほとんどの原因が同じものです。 プロ でも間違ってしまうようなケースもありますが、少し注意して見れば簡単に避けられるものばかりです。まずは自分が注意して、だまされないようにすることで す。 1 修復歴車について 修復歴車とは、交通事故などで車体に損傷を受けた車が、修復したり、部材を交換したりした車のことです。 一般に、修復履歴車を販売する場合は、プライスボードに「修復歴あり」と示すように、自動車公正取引協議会によって定められています。 いわゆる「事故歴」と同義語です。 別に事故歴ぐらいあっても、それで安くなるならいいじゃないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、個々の小さな損傷と違い、大きな事故の場合、車の骨格であるシャーシ自体がゆがんでしまう場合があります。 一度歪んだシャーシは完全に元に戻すことはできず、数ミリ単位でズレが生じます。 そして、そのズレが車にとって致命的なものになることもあるのです。 一方で、バンパーをちょっとぶつけたり、こすったくらいでは「事故歴車」にはなりません。 「事故歴」とは相当のダメージのある事故があった車と思って頂いてほぼ間違いありません。 そう考えると、決して気分よく乗れる物ではないとお分かりいただけるはずです。 それなのに、悪徳事業者にいくと、事故歴と表示しながら、その内容について聞くと、決まって返ってくる一言があります。「コツンとぶつけただけです。」 もう一度言いますが、それだけでは決して「修復履歴車」にはなりません。 いざお店に行ったときは、安い車を見つけた嬉しさで、すっかり舞い上がって気がつかないケースが多いのですが、修復歴車は、買うときに割安に買える以上に、手放す時には更に割安に買い叩かれてしまうということです。 大切なのは、ダメージとそれにともなうリスクの大きさと価格の関係をよく理解し、その上で自分の車に対する要望と照らし合わせることです。 し かし、それ以上に大事なのは、事故歴車であることを内緒にして、より高い値段で売ろうとする店がまだまだ現実に存在することです。 こういったお店の被害 にあわないために、しっかりと事故履歴を公開しているお店や、事故履歴車を扱わないといった事を宣言しているようなお店を選ぶことです。 |
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●<第9回:悪質店にだまされるな。避けておきたい基本の失敗②> |
2 走行メーターの戻しについて 皆さんが中古車を見る時、いったいどこを参考にしているでしょうか? おそらく、皆、たいして違うことはないと思います。 車種、価格、色、年式、車検、キズの有無等です。 そしてこれらが同じ条件の場合に、車の値段を左右するのが、走行距離です。 だいたいの目安としては、一万キロ、三万キロ、六万キロが判断基準の境目になっています。 しかし、これも修復歴車と同様、走行メーターを巻き戻し、走行距離を短く偽ってより多くの利益を得ようとする悪徳業者もいるのです。 このメーター改ざんの場合、素人目では見破ることは難しく購入時に気づかず、被害を受けてしまうケースが多くなっています。 この問題の対策として、日本オートオークション協議会がおこなっている「走行距離管理システム」がありますが、この存在さえ知らない方が多いのが現状です。 実際にはメーターの巻き戻しをしていることを見抜くのは非常に難しいのですが、説明を求めた時にしっかりと対応してくれるお店を選ぶようにしましょう。 そしてひとこと質問してみてください。 「この車(お店)、走行距離管理システムって導入してますか?」 顔色が変わったり、あやふやにごまかそうとするお店は要注意です。 |
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●<第10回:悪質店にだまされるな。避けておきたい基本の失敗③> |
3 保証書とアフターサービスについて 最後に保証書とアフターサービスについてですが、これは車自体というよりも、車を購入したショップに関することです。 日常品や、比較的安い商品に関して は「どこよりも安く」ということが購入の判断基準になってきますが、車などの高額商品に関しては、修理やメンテナンスなどの関係から、そうはいってられま せん。 実際、購入金額自体は安くても修理を受け付けてないディーラーや、他の修理工場などに委託しているところもあり、そういったところで購入するとトータル的にはむしろ損をしてしまうというということも多々あります。 個々で必要なのは、まず「保証書」があるのかどうか、そしてそこに記されていることをチェックすることが重要です。 例えば、保証してもらえる期間はいつまでなのか、走行距離はどれくらいまでなのか等です。 いまのご時世で、中古車だからといって保証をつけていないお店というのは、それ自体がかなり怪しいと思わざるを得ません。そういったお店はいくら値段が安くても避けた方がよいでしょう。 あと、「うちのアフターサービスは万全です、工場もありますから。」といっているその先をしっかり見てみてください。工場といっても、資格を持った工場であることが望ましいです。 「アフターサービスは万全」といいながら、資格を取っていない工場で済まそうとしている会社では、満足なアフターサービスは期待できないでしょう。 実は、中古車販売店にとって整備工場を自社で抱えるというのは、大変コストのかかる事なのです。 それでもあえて整備工場を直営で運営しているというの は、その場で逃げも隠れもせず、その地域のお客さんに長く取引をしてもらおうという意志の表れだと思って間違いありません。 |
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●<第11回:「メーカー系ディーラーだから安心」の落とし穴①> |
最近特に多い声に「メーカーのディーラーだから、安心だと思って買ったら失敗だった!」というものです。 メーカー系ディーラーといえば、ご存知、テレビや新聞にも登場する大手自動車メーカーの販売店のことです。 そんな会社がまさか変な車は売らないだろう、と思ってしまいそうですが、現実は必ずしもそうでもないようです。 もちろん、会社の体制などはメーカーの傘下ということからくる、弊害もいくつかあるようです。 1 メーカー系ディーラーで買ったのに事故歴車だった! 最も多い誤解は、「メーカー系ディーラーには事故歴車はないだろう」というものでしょう。 さすがに事故歴車を「事故歴車ではありません」といった売り方はしないと思いますが、メーカー系ディーラーの売場にも事故歴車(修復履歴車)は置いてあります。 親切に教えてくれる営業マンならよいのですが、そうでない場合は、こちらから確認する必要があります。一方的に「事故車は置かないだろう」と思っていると、知らずに買ってしまうケースもあるようです。 2 メーカー系ディーラーなのに、他のお店より高かった! メーカー系のお店だから何もかも整っていそうに思ってしまい、価格設定も適正だろうと考えてしまいそうです。 ですが、現実には多くのメーカー系ディーラーの中古車は、一般の中古車販売店よりも割高なプライス設定になっていることが多いようです。 それは、メーカー系中古車ディーラーの価格を、お店の店長ではなく、本部からの指示で決定していることが多いからです。 売れる、売れないに関わらず、下 取価格に本部が設定する利益水準を乗せて価格を設定している事もあるため、どうしても割高のプライス設定になってしまうことが多いようです。 |
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●<第12回:「メーカー系ディーラーだから安心」の落とし穴②> |
3 メーカー系ディーラーなのに営業マンがいい加減だった! これもよく聞く声なのですが、「メーカー系ディーラーの営業マンだから、しっかり教育されていて、ちゃんと対応してもらえると思ったのに、すごくいい加減 だった!」ということがよくあります。 実際のところを聞いてみると、メーカー系ディーラーでは、やはり新車部門が収益源で、中古車部門はあまり重要視さ れていないようです。 そうすると、必然的に新車部門で成績の悪い営業マンが中古車部門にまわされてしまうのです。 以前にあった話で、メーカー系ディーラーの営業マンと話をしていると、 「俺、来月から中古車担当になっちゃったんですよ。もう出世できないかもかも知れないです・・・。」 と落ち込んだ声で言ってくるのです。 だからと言って皆がそういった人とは限りませんが、全国的にそういう傾向があることは確かなようです。 4 メーカー系ディーラーなのにアフターサービスを断られた! 「メーカー系ディーラーなのに、買った中古車を持っていったら、修理できないと言われた!」という話を聞くことがあります。 これは、メーカー系ディー ラー特有の弊害であり、ある程度は仕方のないことなのです。 というのも、メーカー系ディーラーでは、新車は自社のものしか扱わないのですが、中古車にな ると他メーカーの車も取り扱うケースが多いのです。 しかし、メンテナンスとなると、自社のものしかできない事が多いのです。 アフターサービスをする気があっても、自社で処理できないため、断らざるを得ない事があるのです。 こ れには、もうひとつ、メンテナンスの体制もあります。メーカー系ディーラーでは、どうしてもアフターサービスは、新車を買ったお客様に対してのもの、という認識があるため、中古車に対してはアフターサービスの人員自体がいない場合があるのです。 ですから、中古車の顧客に対しては、メンテナンス自体が疎かになってしまっているのも現状です。 |
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●<最終回:最後に> |
日曜日に近所を散歩していますと、洗車をしている光景によくぶつかります。 しかし、洗車をしている方の表情はまさに千差万別で、にこにこした顔もあれば、嫌々宿題をやらされているような顔もあります。 そして間違いなくいえることは、前者の方は車選びに成功した人です。 もちろん、なにかいいことがあったのかもしれません、彼女ができたとか、子供が大学にうかったとか、おもわぬ臨時収入があったとか・・・ そのような光景にぶつかる時、私はいつも「誰に車選びを頼めば安心か」と自問自答します。 しかし、絶対これという答えは見つかりません。 車選びに成功するか失敗するかは誠心誠意の仕事をしてくれる店を選択できるかどうかにかかってます。 つまり、あなた自身が「本物を選ぶ目」を身につけなければ、成功の道は開けないのです。 「本物を選ぶ目」は最初から備わっているわけではありません。 何回もディーラーを回り、根気よく疑問をといていかなければなりません。 何十冊の中古車雑誌を読むよりも、いいお店選びが成功の近道なのです。 一生に何度とない車えらびです。 是非成功して充実したカーライフを送ってください。そしてあなたが後へ続く人の道しるべになってくれることを願っています。 |
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