2011/11/27

アウディA6


























ベンツEクラス、BMW5シリーズのライバル

アウディA6が、フルモデルチェンジをした。新型アウディA6は、メルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと競合する、ドイツの4ドア中型セダンだ。車体の大きさは、この競合3車はほぼ同じ、まさに真っ向勝負のドイツ車3台ということになる。

 新型アウディA6のエンジンは、V型6気筒ガソリン直噴の排気量2800 cc と、3000ccでスーパーチャージャー付きの2種類。トランスミッションはどちらも、7速のSトロニックと呼ばれ、二つのクラッチで滑らかに変速する機構を備える。両車種とも、アウディ社がクワトロと呼ぶ4輪駆動でもある。

低重心が生み出す軽やかな運転感覚

今回は、2800ccエンジンの2.8FSIクワトロと、3000ccエンジンの3.0TFSIクワトロの双方に試乗することができた。

 このうち、印象深かったのは、2.8FSIクワトロである。車格が、メルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと同格であるのに、乗車感覚が全くその2台と異なるのである。どう違うかというと、非常に軽快なのだ。そして、静かな室内が滑るように移動していく独特の感触がある。

 なぜ、それほど走りが軽やかなのか? 車両重量をメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと比較してみると、重さの数値自体はほとんど変わらない。しかし、両車の重厚さと新型アウディA6で感じる軽やかさの中にある落ち着きは、いったいどこから生まれてくるのだろうかと気になった。

 私なりの結論は、アルミを多用した車体構造にある。まず、車体が圧倒的に軽いのだ。すべて鋼板で作られた車体に比べ、15%ほど軽く仕上がるとアウディは説明する。しかも、車体の重心から離れる外板のボンネットフード、フロントフェンダー、4枚のドア、そしてトランクリッドがアルミ製である。

 それでもクルマ全体の重さである車両重量が他のドイツ車2台と同等なのはなぜか。アウディA6は4輪駆動であるため、走行装置が後輪駆動のメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズより重くなる。

 つまり、客室がある車体上部は軽く、客室より下の走行機能部が重いというのが、新型アウディA6の構造的特徴だ。したがってクルマの重心が低い。こうして、走行感覚はどっしり地面に腰を落ち着けた安定感があるけれども、加速したり、ハンドルを切って曲がったりという動きが与えられたときには、車体上部が軽いから、軽やかさを感じるというわけだ。

 そのほか、トルクベクタリングと呼ばれる4輪の駆動力制御が加わり、無駄なく四つのタイヤに駆動力を伝達して加速させるので俊敏さが増す。

 そこに静粛性が加わる。静かというより、静謐(せいひつ)といった雰囲気だ。穏やかに落ち着いたたたずまいが感じられる。

人が主役の乗り心地、機械の鼓動に触れる喜びも

アウディは、先進技術を通じて革新のリーダーになるというクルマ開発のため、従来は、機械が稼働している様子を走行中に感じることが多かった。機械が己を主張しているのだ。だが最新のA8あたりから、機械の機能が人の快適さに寄り添うようなクルマ作りに変わってきた。機械が主張するのではなく、人を主役とした乗り心地になってきた。

 新型アウディA6も、そうした最新のアウディの快さを備えている。なおかつ、先進技術を活用することで、重々しいのではなく、落ち着きの中に爽快さを覚えさせる新しい走りの感覚を作り上げた。新型アウディA6の2.8FSIクワトロは、まさにその象徴的な車種だ。

 排気量が大きく、馬力も強い3.0TFSIクワトロも、その路線上にあることは疑いもないが、機械部分が、より主張をし始める。2.8FSIクワトロの1.5倍ものエンジンパワーを備えた高性能車であるから、3.0TFSIを選ぶ人は、そうした高性能さを実感することを期待しているだろう。つまり、機械の鼓動に触れる喜びが、3.0TFSIクワトロにはある。

 最新のアウディが、いかなるクルマか体感したければ、新鮮な走行感覚を備えた2.8FSIクワトロがきっと乗る人に感動を与えることだろう。そして、価格的にも魅力ある値段が設定された。

 昨年、日本で最高の売り上げを達成したというアウディが、さらにグンと人気を増す予感を与える新型アウディA6であった。

(読売新聞)


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