2012/03/03
新・六本木カローラ? 新型3シリーズ
約7年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたBMWの基幹モデル、3シリーズ。これで第6世代となり、コードネームは先代のE90からF30へと変化した。ワールドプレミアは1月のデトロイト・ショー。3シリーズはセダン、ワゴン、クーペ、カブリオレ、Mモデルと広いバリエーションを持つが、まずはセダンが発表されている。日本へは手始めに2L直噴4気筒にツインパワーターボと呼ばれるツインスクロールターボを組み合わせ、245psを計上する「328i」を導入。後に「320i」、そしてデトロイトでも初公開された「アクティブ・ハイブリッド3」も順次上陸する予定だ。ボディサイズは本国仕様で全長が+93mm、ホイールベースが50mm拡大。前後トレッドも前+37mm、後+47mmとなっている。サイズ拡大の恩恵は、後席のニールームが15mm拡大し、トランクスペースが8mm拡大するなど、居住空間に生かされている。先代同様、ドアハンドルを日本専用設計とし、全幅を1800mmに抑えていることも特徴だ。
[良いところ]
乗って5mでわかる「あ、BMWだね」という世界観。質感、触感、剛性、アクセルに対する反応。どれもが期待を裏切らないザ・BMWの世界だ。走り始めれば、エンジンは相変わらずレッドゾーン手前の7000rpmまで淀みなくキレイに回るし、豪雨の中でもスタビリティはバッチリ。8速(!)ATのシフトマナーはいいし、車重1560kgを感じさせないフットワークを持つ。もはやBMWの常識となったiDriveやモニター表示もちゃんと進化しているし、ヘッドアップディスプレーを含めたメーター類の視認性もかなり高い。以前BMWのドラトレを取材した時にBMWが推奨するドライビングポジションを習ったが、今回もそれに合わせたら体にしっくりと馴染んだ。おそらく今までにBMWに乗ったことがあれば、10秒で慣れるはず。なおアイドリングストップ装備が象徴するように、燃費は約24%改善。スポーツ、コンフォート、エコプロの3モード(Sportグレードはスポーツ+もあり)が用意されたドライビングパフォーマンスコントロールの制御も違和感なくお見事だった。
[気になることろ]
試乗中、ここに何を書こうか悩むほど、突っ込みどころのないクルマだった。今回は標準モデル(570万円)のほかに「Sport」、「Modern」、「Luxury」の3仕様が同価格(586万円)で用意され、内外装のディテールやホイールデザインが異なっているのが特徴。最初にLuxury(ブルーのクルマ)に試乗し、「これはパドルシフトが欲しいなぁ」と思って次にSport(レッドのクルマ)に乗ったら、ちゃんと付いている……などとにかくスキがないので、ヒネクレ者風に「完璧すぎて気に入らない」と書くしかない。それでも敢えて書けば、劇的な新しさを感じない=コンサバティブすぎることは少し気になった。次の7年間、これで飽きられないのか? とは要らぬ心配か。あと同乗者のことを考えると、タイヤのコンパウンドがもう少し柔らかいほうがいいのでは? とも感じた。ちなみに撮影車はグッドイヤー製を装着していた。
[ライバルは]
メルセデス・ベンツCクラス、アウディA4、フォルクスワーゲン・パサート。ドイツ勢のこのクラスはどれも基幹モデルということで、力の入り方も違うし、派生モデルも多い。はっきり言ってどれを買っても間違いないし、もはや好みの世界だ。それぞれセダンの価格帯はCクラスが399~680万円(AMG除く)、A4が440~556万円(S4除く)、パサートが324~374万円となる。今のところは導入直後ということで328iのみとなり競争力は弱いが、新車効果が暫くは続き、そのうちラインナップが揃えば十分戦えるだろう。ただ先にも書いたとおり、今回はコンサバティブなモデルチェンジなので、数年後にやってくるライバルたちのモデルチェンジ次第では、苦戦を強いられる可能性もある。ドイツ勢以外ではキャデラックCTS(490~639万円)、レクサスIS(398~538万円)あたりも競合してくるだろう。
[総合評価]
残念ながら時折強い雨が降る中での試乗となったが、それでも完成度の高さは十二分に感じることができた。新しくないとかコンサバとか生意気にも書いてしまったが、それはひとつひとつの変化=進化が自然であり、絶妙に調和しているからだと思う。これまでBMWが試みてきた新技術が出るたびに驚きつつ、時には違和感を覚えてきたが、それはもう過去の話。少なくともF30型3シリーズに採用されているもので違和感を覚えるものは皆無だった。おそらくサプライズ系は市販型の開発が進んでいる「iシリーズ」に任せて、こちらは確実にBMWオーナー&ファンへの訴求をするということなのだろう。そういえば現行5シリーズが出た時に、クリス・バングルがデザインチームを率いた時代の刺激的なフェイスから随分コンサバになったなぁと感じたが、実は最近街中で5シリーズを見ると、「あ、コレいいかも」と思うようになった。きっとこの3シリーズも街中に馴染み、気が付けば周囲がF30だらけになっているかもしれない。かつて「六本木カローラ」と呼ばれたE30型3シリーズだが、F30は果たして?




