2008/03/29
インド自動車大手タタ、世界市場へ足場…「ジャガー」・「ランド・ローバー」買収
高級車でブランド力強化
インド自動車大手タタ自動車は26日、米自動車大手フォード・
モーター傘下の英高級車ブランド「ジャガー」と「ランド・ローバー」
を買収すると発表した。
買収額は23億ドル(約2300億円)。ブランド力のある高級車メー
カーの買収により世界市場に挑む基盤を整える狙いとみられる。
世界の自動車業界で新興国メーカーの存在感が一段と高まって
きた。
(シンガポール 実森出、ニューヨーク 池松洋、ロンドン 中村宏之)
タタ財閥の総帥でタタ自動車会長のラタン・タタ氏は同日、「我々
は二つのブランドに大きな敬意を持っており、遺産や競争力を維持し、
高めるよう努める」との談話を発表し、両社の経営体制や雇用を
守る考えを示した。
インドでトラックやバスなどを扱う商用車メーカーとして出発した
タタは、1990年代にインドの乗用車市場に本格参入した。インド
自動車工業会(SIAM)の統計によると、インド市場における2007年
4月?08年2月のタタの乗用車シェア(市場占有率)は13%の3位で、
トップのマルチスズキ(43%)には及ばないが、韓国・現代自動車
(21%)を急速に追い上げている。
タタは、インドでイタリアの大手自動車メーカー、フィアットと小型車
の合弁生産を行っているほか、今年1月には自社開発した1台10万
ルピー(約25万円)の超低価格車「ナノ」を発表し、乗用車事業を一
段と強化する方針を打ち出した。
ジャガー、ランド・ローバーの買収は、商用車から低価格車、高級
車までをそろえる総合自動車メーカーに脱皮し、ブランド力を強化して
「世界市場に打って出る足場を築く狙いがある」
(インドの自動車業界に詳しいムラード・アリ・ベイグ氏)とみられる。
ただ、両ブランド車の販売台数は少なく、低価格車との部品共有化
は難しいため、買収によるコスト削減の利点は小さい。「イメージアッ
プにはつながるが、何のために買収するのかよく分からない」
(日本の業界関係者)と買収の効果を疑問視する声もある。
しかし、鉄鋼業界では同じインド勢のミッタルが買収を繰り返し、
短期間で世界最大手に上り詰めた。
グループ全体でインドの国内総生産(GDP)の3%超に匹敵する
売上高を誇るタタ財閥の資金力を背景に、世界の自動車業界の
再編で「台風の目」となる可能性は十分にありそうだ。
在英インド人誇り
タタ自動車による「ジャガー」「ランド・ローバー」の買収を英国在住
のインド人は歓迎している。英金融街シティで働くインド出身の会社
員ヘムラージ・ブルジューさん(36)は「インド企業が英国の高級車
ブランドの経営を担うのは素晴らしいことで、インド人として誇りに思う。
タタはこれら高級ブランドを手に入れ、今後も一層利益を上げて行く
だろう」と話していた。
(読売新聞)