2008/09/05
世界最安車「ナノ」生産に暗雲 インド・タタ、工場撤退も
インドのタタ・モーターズが進めている世界最安の乗用車「ナノ」
の生産計画に黄信号がともった。建設中の工場周辺で、土地の
収用に反発する農民らの大規模な反対運動が起きているためだ。
ラタン・タタ代表は22日、工場の撤退も辞さない意向を表明した。
タタ・モーターズは10月の販売開始に向けて、西ベンガル州東
部のシングール地区に新工場を建設中で、すでに150億ルピー
(約375億円)を投資した。撤退を余儀なくされた場合、新たな生
産拠点を見つけなければならず、地元メディアは「販売開始が大幅
に遅れるばかりではなく、損失発生で10万ルピー(約25万円)で
のナノの販売は難しくなる」と伝えている。
工場用地は約1千エーカー(約4平方キロメートル)で、州政府が
農民から収用し、タタと賃貸契約をむすんだ。州政府は農民に補
償金を支払う方針だが、約400エーカーを所有していた約2200
人の農民は収用に反対し、補償金の受け取りを拒否している。
反対運動には地元の有力政党も加わり、混乱に拍車をかけている。
タタ代表は「混乱が続くようであれば、従業員の安全を考えて、
撤退せざるを得ない」と語った。建設現場では農民と警官隊が衝突
し、すでに多数の負傷者が出ている。 (朝日新聞)