2009/05/21
フォルクスワーゲン ゴルフ さらなる燃費向上と静粛性を実現
ゴルフ コンフォートライン
世界の小型車の規範といわれるフォルクスワーゲンのゴルフが、
フルモデルチェンジをして6代目となった。新型ゴルフは、さらなる
燃費向上と上質さが特徴となっている。
新型ゴルフを見て好感を覚えるのは、そのシンプルな顔立ちだ。
素直に「いい感じ」と思えるスッキリしたデザインであるにもかかわ
らず、他にはない存在感を備える。ワッペングリル(ワッペンはドイ
ツ語で紋章の意。
盾をかたどり、太いクロームで縁取られたフロントグリルのデザイ
ン)を象徴とした前型が強い表情であったのとは対照的だ。
簡素で機能的ながらもこだわりを感じる室内
室内も簡素で機能的な印象を与える。それでいて、ダッシュボード
のパッドに触れてみると指が沈み込む弾力を備え、優しさを感じる。
一方、ドア内側に設けられたパワーウインドーのスイッチにはさりげ
なくクロームの縁取りがあるなど、小粋さも伝えている。外観同様、さ
りげなさの中に、良い物に触れる実感や喜びを覚えさせるのであった。
エンジンは、小排気量の1,400ccだが、これにターボチャージャーや
スーパーチャージャーといった過給機を装備することで、低燃費と優れ
た動力性能を両立するTSIのみの採用となる。
ただし、コンフォートラインとハイラインの2つの車種を設け、ターボチャ
ージャーのみの設定と、ターボチャージャーおよびスーパーチャージャー
の2つを装備した高出力の設定に分かれる。
トランスミッションは、どちらもフォルクスワーゲンが世界に先駆けて投
入してきたDSGである。
TSI+DSGの手法は、すでに前型で採用してきたものだ。それを進化
させ、これまでに比べ最高の低燃費を実現したという。
試乗をしてまず体感するのは、静粛性の良さだ。とくに信号待ちなどア
イドリングで停車している際には、アイドリングストップをしているのでは
ないかと錯覚するほど騒音も振動も皆無に等しい。
遮音性能を高めたフロントウインドーや、ガラスの厚みを増やしたフロン
トサイドウインドー、振動を抑制するエンジンマウントなど、新型ゴルフに
新しく採用された各項目が、こうした振動と騒音の少なさをもたらしている
のだろう。
TSIを採用したエンジン
その静粛性は、走りはじめてからも変わらない。日本の上級車が
得意とする走行中の静かさに負けず劣らない驚きの静かさを、新型
ゴルフも達成している。
このような日本車に近い快適性を備えるに至った反面、クルマが
走っているという手応えの体感は薄くなったと言わざるをえない。
車体やサスペンションなどは前型を基本的に継承しているとの説
明だが、車体の頑丈さや、しっかり路面を捉えているというタイヤの
接地感覚が薄まったように思えた。
さらに、TSIエンジンの加速の滑らかさもやや落ちて、過給機が働
く際のタイムラグに気付かされることがある。燃費向上をさせるため、
何かエンジン制御を変えてきたのだろうか?
ゴルフ ハイライン
ただ、フォルクスワーゲンに限らず、ドイツ車は年を追うごとに
改善され、成熟の度合いを増すといわれている。事実、前型の
最終仕様が「一番の買い得」とさえ言われるほどの仕上がりな
ので、今後この6代目ゴルフも、年々洗練されていくだろう。
その暁には、世界の規範という価値に間違いのないことを改
めて証明するに違いない。
いずれにしても、フォルクスワーゲンの顔としてゴルフの存在
意義は、他の小型車がなかなか追いつけない不動の地位にあ
ると思う。
(読売新聞)