2009/07/18
メルセデス・ベンツ Eクラス クーペ 試乗レポート
EクーペはCLKのアップデート版
1985年に登場したW124はバブル絶頂期に
あった当時の日本でも、その後Cクラスへと
発展する一回り小型の190E(W210)とともに
大ヒットしている。
Bピラーを持たないサッシュレスウインドウ形式
はこのW124クーペも共通だ。
ツインヘッドライトやリアフェンダーの個性的な
デザインなどのアイコンは新型Eクラスファミリー
共通。伝統のサッシュレスウインドウは最新型
でも踏襲された。
グリルのフィンやボンネットのアローシェイプ、
ライト周りはセダンよりシャープな印象を強めて
いる。
新型Eクラスに続いてEクラスのクーペが仲間入りした。ミッド
サイズのEクラスのクーペはいまから20年前のW124の時代で
終わっている。
その次の世代ではCクラスのクーペとしてCLKが提供された
からだ。その意味では久しぶりのEクーペとなる。
しかし、実際のボディサイズはCクラスベースで開発されたの
で、Eクラスのセダンよりもコンパクトだ。
大きくなったEクラスのボディでクーペを作るとCLに近づいてし
まうというのが、Cクラスベースで開発した理由だ。
分かりやすく言うとCLKがEクーペにアップデートされたことに
なる。しかし、Eファミリーとして扱うので、装備や質感はEクラスに
準じている。
CLKでもEクーペでも呼び方は問わないが、そのスタイリングは
本当に美しい。
横から眺めるとBピラーがなく前後ウインドウが完全に格納される
のでとても開放感がある。
流れるようなリヤのルーフラインはクーペの大きな特徴だ。フロント
マスクは、Eクラスゆずりのシャープな顔つきだが、よく見るとヘッド
ライトがセダンよりも切れ目となりいっそう精悍さを増している。
フロントグリルは大きなベンツのアイコンであるスリーポインテッド
スターが印象的だ。空気抵抗係数Cdは0.24とこのクラスでは文句
なく世界一小さく、そのおかげで高速走行の燃費はかなり良さそうだ。
とにかくスタイリングに文句はない。
インテリアを見るとバケット・タイプのフロントシートがスポーツカー
を彷彿させる。でも、実際に座った感じは高級車の心地よさだ。
前席のシートを倒すと自動的にシートが前方に移動し後席にも乗
りやすい。アウトバーンで後席に乗ってみたが、窮屈な感じはあまり
なかった。
このEクーペはトランクルームにゴルフバックが3つは収納できるし、
2分割のリアシートを倒すとスノーボードやスキーも収めることができ
る。とにかくメルセデスらしく実用性は申し分なかった。
そうなると俄然、走りが気になってくる。
本命は1.8リッターの直噴ターボ
E350CGIは6気筒エンジンとしてははじめて、
ピエゾインジェクターを使ったディーゼル並みの
高圧&マルチ噴射が可能なスプレーガイデッド
直噴方式を採用した希薄燃焼エンジンだ。
ただし、噴射圧は200気圧でディーゼルと同等
だが、ディーゼルが1回の圧縮工程で最大5回
の噴射を行うのに対し、CGIエンジンは最大3
回。欧州参考値(NEDC総合燃費)の燃費は
8.5リッター/100kmと、従来のV6に比べて
14%低減している。ほぼ同時期にBMWもス
プレーガイデッド式希薄燃焼エンジンを発表し
ている。
セダン同様エアコンダイヤルが廃止され
整理されたインテリア。立体的なメーター
や3本スポークのステアリングなどスポー
ティな仕立てをもつ。
エアコンは新たに、運転席・助手席・後席
の温度・風量・風向を個別設定可能なほか、
異なるクライメートモードも設定可能なサー
モトロニックシステムをオプション設定。
ボタンひとつでディフューズ・ミディアム・フォ
ーカスの3つのモードを選ぶことができる。
バケットタイプのシートも新開発。
新型Eクーペのステアリングを握ってメルセデス本社があるシュ
ツットガルト周辺をドライブした。まず試乗車のスペックから紹介
しよう。
エンジンは5.5リッターV8と3.5リッターV6をテストした。
V6は最新のガソリン直噴のCGIだ。直噴V6はパワーが292ps
でトルクが365Nm。従来型V6と比べるとトルクで15Nm高まっ
ているが、燃費でも直噴が有利だ。
ドライブしてみると、アイドルでカチカチとインジェクターの音が
するくらいで従来のV6との違いはあまり感じられない。ギアボッ
クスは7速トルコンATだ。
エンジンとATがもたらすスムースな加速感こそ、メルセデスの
高級らしさなのである。
5.5リッターのV8はどうか? このエンジンはある意味で新鮮だ。
というのも、このコンパクトなボディにV8を組み合わせるのが、
とても贅沢な感覚を生むからだ。
洗練されたEクーペのシャシーとV8の組み合わせは極上の味わ
いを持っていた。
試乗は叶わなかったが、Eクラスのセダンで味わった4気筒1.8
リッター直噴ターボがEクーペに搭載されて日本に上陸するらしい。
実はこのエンジンは今後メルセデスにとっても極めて重要なエン
ジンなのである。というのはメルセデスとしては初めてのダウンサ
イジング・エンジンだからだ。
ちょうどVWゴルフのTSIエンジンに似ている。Eクラスに4気筒と
聞いただけでも格安エンジンと思ってしまうが、最大トルクは310
Nmもあるので、3リッターV6エンジン以上のトルクを低い回転数で
得ることができる。
つまり、このエンジンならEクラスとしての力強さと品格も充分で
あるが、燃費はV6エンジン以上に優れている。5速トルコンATと
組み合わされるので、購入価格も割安感があるだろう。
まだEクーペと1.8リッター直噴ターボの組み合わせは試してない
が、Eクラス(セダン)よりも軽量でコンパクトなクーペボディにはうっ
てつけのエンジンではないだろうか。
AMGスポーツパッケージがお勧め
後席はセパレートタイプの2座。可倒式で
個別あるいは2個一緒に倒すことが可能だ。
写真はE500クーペ。AMGスポーツパッケージ
を装着すると、グレードを問わず大型エアイン
テークを備えたAMGフロントエプロン、AMG
サイドスカート、ブラックアウトされるリアディフュ
ーザーなどが装着される。また、ホイールは
18インチ6ツインスポークデザインで、タイヤは
前235/40R18、後255/35R18に。ブレーキ
もドリルドベンチレーテッド仕様。
CLKからアップデートしたEクーペのシャシー性能はどうだろうか。
ノーマルのシャシーでも良さそうだが、試乗車にはすべてオプション
のAMGスポーツパッケージが備わっていた。
このパッケージには「13.5対1」というクイックなステアリングギア
比と電子制御の可変ダンパー「セレクティブ・ダンピングシステム」
が採用される。
そのためハンドリングは鋭く、すばらしくダイナミックに走ることが
できる。しかも乗り心地はメルセデスらしさを残しているのだから
文句はない。
筆者は1.8リッターの直噴ターボとAMGパッケージの組み合わせ
が気になるのだ。
実用性に富んだEクーペは、老若男女問わず、気になるメルセデス
ではないだろうか。
=参考:欧州で発表されたEクーペのエンジン=
<ディーゼル>
2.2リッターディーゼル
…E250CDI BlueEFFICIENCY (500Nm/204ps/135g)
3リッターディーゼル
…E350CDI BlueEFFICIENCY (540Nm/231ps/179g)
<ガソリン>
1.8リッター直噴ターボ
…E250CGI BlueEFFICIENCY (310Nm/204ps/167g)
3.5リッター直噴自然吸気
…E350CGI BlueEFFICIENCY (365Nm/292ps/199g)
5.5リッター自然吸気
…E500CGI (530Nm/388ps/255g)
(カービュー)
関連URL : http://special.mercedes-benz.co.jp/E-Class/coupe/main.html