2012/02/04

フェラーリ史上初の4WD、FFに乗る






「どんなクルマ」

2011年3月のジュネーブ・ショーで発表された612スカリエッティの後継にあたる、フロントにV12を搭載する4シーターモデル。ただし612がFRだったのに対し、フェラーリ史上初となる4WDの市販車となる。車名は4シーターや4WDを意味する「フェラーリ・フォー」となり、略して「FF」とも呼ばれる。V12は660ps/69.7kgmのスペックで、0→100km/hが3.7秒、最高速が335km/h。ミッションにカリフォルニア、458と採用されてきた7速デュアルクラッチを組み合わせる一方、燃費性能の15.4L/100kmと従来V12比25%削減となる360g/kmのCO2排出量もアピール。これは日本仕様でストップ&スタート機構を持つ「HELEシステム」を標準化したことによるという。4WDは「4RMシステム」と呼ばれ、後輪へのトルクを維持したまま「PTU(パワー・トランスファー・ユニット)」が状況に応じて最大限のトルクをフロントへと配分。さらにPTUはE-Diff(電子デファレンシャル)、F1-Trac(トラクションコントロール)と同じCPUに統合されており、個々のタイヤへ最適なトルク配分が行なわれるそうだ。

「よいところ」

流麗なデザインだった612に対しエッジの効いた刺激的なエクステリアデザインへの変貌は、写真初公開時は正直賛否両論だったが、実車は存在感が強い上にその刺激が不快ではない。ストレートに書けば、意外や意外、これはかなりカッコイイ。いかにもフェラーリらしいインテリアも、例えばバックギヤなどのスイッチが並ぶセンターのアルミ部分は、イタリアンデザインの真骨頂と感心するばかり。取材車の車検証上の車重は1970kgもあるが、とてもそうは思えない身軽さが身上。そうなると4.9mの全長と1.9mの全幅も、大きさを感じないから不思議だ。今回の試乗コースでは4WDのメリットを享受できなかったが、フロントが引っ張ってくれる感じは、今までのフェラーリになかったもの。踏み込んだ時の安定感も、少なくとも自分が試乗した範囲では歴代フェラーリでナンバーワンと言える。

「気になるところ」

エンジンをかけた時のV12サウンドは、まさに感動的なもの。サウンドチューニングは完璧で、HELEシステムをオンにすれば、街中では何度も何度もこの音を聞くことができる。ただしこれほどの大音量だと、周囲に迷惑かも……とは要らぬ心配か。ただHELEシステムの反応速度は、電光石火の反応をするドイツ勢などに比べると、まだまだ改良の余地ありかもしれない。そしてこれは台数的に少ないので致し方ないのかもしれないが、センターモニターが基本的にタッチパネルなのに対し、ナビゲーションだけ対応していないのは気になった。あとボディカラーのせいか、街中であまり視線を感じなかった。もし周囲にアピールしたい方は、赤など目につく色を選択されたほうがいいだろう。

「ライバルは?」

12気筒をフロントに積む4シーターのクーペとなると、「ベントレー・コンチネンタルGT」、「メルセデス・ベンツCL65AMG」くらい見当たらない。4ドアモデルまで含めれば、「アストンマーティン・ラピード」、「ポルシェ・パナメーラ」もライバルとなるのだろうか。では最高出力/価格をチェックすると、FFが660ps/3200万円、コンチGTが575ps/2415万円、CL65AMGが629ps/3020万円、ラピードの上級グレードが470bhp/2509.5万円、パナメーラのターボSが550ps/2481万円。これの上を探すとロールス・ロイスのファントム・クーペが見つかるが、460ps/5187万円と価格が全くの別次元。つまりFFは完全な対抗馬が存在しない、独自のポジションを持った4シータークーペと位置付けられていることがわかる。

「総合評価」

もうすぐモデルチェンジされるであろう2シーターV12モデルの599や先代となる612は、本当に素晴らしいモデルだった。咆哮するという表現が相応しいV12気筒に、特に599で初採用されたSCM(磁気で減衰をコントロールするサスペンションシステム)がもたらす、フラットさとスポーティさを両立した足まわり! そしてFFは第3世代となるSCMを備え、その「よさ」がさらに進化していた。各部のクオリティも実に高く、こういったものをサラリと造ってくる現代フェラーリの技術力の高さに改めて感心する。
フェラーリを新車で購入したことをアピールするには、おそらく458イタリアや458スパイダー、あるいはカリフォルニアといったV8のほうが派手で分かりやすいだろう。ある意味「周囲への効き目が弱い」FFを購入するのは、これ1台だけでなく他にもスーパーカーが所有できる富裕層中の富裕層であり、これぞまさに「スーパーカー趣味における究極の贅沢」なのである。

ズバリ結論! 富裕層中の富裕層が選ぶ、フェラーリ史上最強のセカンドカー

(ホビダスオート)

http://www.ferrari.com/Japanese/GT_Sport%20Cars/CurrentRange/FF/Pages/FF.aspx


コメントは受け付けていません。

心のこもったディリーメッセージ

メカニックの部屋(修理事例) 

サイト内検索


Go Top