2012/05/30

レンジローバー・イヴォーク




































英国生まれ 燃費の良さ備えた四駆

レンジローバーは、英国生まれの四輪駆動車だ。現在、これを生産するランドローバー社は、インドのタタ自動車の子会社の位置づけにある。

 レンジローバー・イヴォークは、まったく新たに生まれた車種である。そもそもは、2008年の北米国際モーターショーに出展されたランドローバー社のコンセプトカーに由来する。したがって、イヴォークは、その外観がなにより強い印象を与える。頑丈でいかついイメージのある悪路走破を得意とした四輪駆動車で、これほど斬新な姿はこれまでなかったのではないか。そのデザイン、設計、生産は、一貫して英国で行われている。

 レンジローバー・イヴォークはまた、歴代レンジローバーの中で最も小さく、最も軽く、最も燃費の良い四輪駆動車であるところも特徴だ。とはいえ、車体の高さが1.6メートル以上あり、車幅は1.9メートルもあって、なかなか存在感のある大きさである。ちなみに、車体の長さは4.3メートル強で、この寸法は小型セダンほどの短さだ。

 レンジローバー・イヴォークは他にも、4ドアハッチバックに加え、2ドアハッチバックの「クーペ」と呼ばれる車種があることも独創的だ。通常、クーペと言うと、乗用車のスポーティー仕様であるのがほとんどで、悪路走破性を備えた四輪駆動車では珍しい存在だ。しかしそこが、レンジローバー・イヴォークらしい、見た目のデザインを優先した魅力づくりにつながっている。

高級でありながら嫌みがない

 今回試乗したのは、4ドアハッチバックのプレステージと、2ドアハッチバッククーペのダイナミックという2台で、どちらもそれぞれの最上級車種である。

 ドアを開けると、高級な英国車の趣のある、華やかな室内に迎えられる。本革の香りが漂う室内は、おしゃれであり上品な風合いがある。室内は機能的にデザインされ、ただ豪華を売りにするような嫌みがない。目に心地よい空間がそこにある。

 運転席に座ると、フロントウインドーのガラスの上下幅が狭く、いかにも天井の低いスポーティーな姿のクルマである様子が、室内にいても感じられる。

 車両重量が1.7トン以上もあるレンジローバー・イヴォークに搭載されるエンジンは、排気量が2000ccの直列4気筒で、ターボチャージャーにより過給されている。最高出力は240馬力だ。

 英国の高級車ジャガーにも採用されている丸いダイヤル型をしたシフト切り替えスイッチをDレンジに入れ、発進。エンジンのアイドリング回転からわずかに上の1,750回転/分で最大トルクを発生するエンジン特性をいかし、軽快に速度に乗せていき、重いクルマを運転しているというもどかしさはない。逆に、ためしにアクセルペダルをより深く踏み込んでみると、ターボチャージャーの威力を使ってガツンッと鋭い加速を見せ、猛然と速度を上げていく猛者でもある。

 乗り心地はしっかりとした感触で、硬めと言えるが、車高が高いことによる乗車中の視線の高さがあるため、このしっかりとした乗り心地が、横転などを心配させない安心感につながっている。

 市街地や高速道路でも、不安なく運転できる四輪駆動車といえる。

走路に合わせて自在な走り

 レンジローバーには、「テレイン・レスポンス」と呼ばれる走行モード切り替え機能があり、これがイヴォークにも搭載されている。

 テレイン・レスポンスは、オンロード/砂・砂利・雪/泥・わだち/砂地など用途別に切り替えがあり、それぞれの走行状況に合わせ、エンジン出力やトランスミッションの変速時期、サスペンションの硬さなどが調整され、誰もが安心してあらゆる道を走り通せるようにする仕組みだ。今回は、それほど過酷な道を走る機会はなかったが、かつて他のレンジローバーの車種で、泥だらけの所や砂場でその機能を存分に味わったことがある。

 今回は舗装道路上ながら、テレイン・レスポンスのモードを切り替えてみると、エンジンの調子やトランスミッションの変速の様子、サスペンションの乗り心地などが変化するのを実際に体感でき、きめ細かく道路状況に応じた制御が行われている一端に触れることができた。

男女を問わず 愛されるクルマ

 狭い道では、1.9メートルある車幅がやはり気になった。また、車体すぐ脇の外の様子も見えにくく、普段以上に周囲への気配りをしながら角を曲がるなどの注意が必要と感じた。

 日本で乗るにはそうした一面もあるが、こんなに躍動的な姿の四輪駆動車はなかなか他にあるものではない。同時に、乗ってみれば、英国の高級車の趣の上質な空間を味わうこともできるのだ。そこには、ドイツ車とは違う別のヨーロッパ車の世界がある。

 クーペの方は、乗降の際に前側のドアから行わなければならない不便さはあるが、あとの使い勝手は4ドアハッチバックと大きな変わりはなく、何と言っても、イヴォークを象徴するクーペの格好よさは、他にないうれしさではないか。

 レンジローバー・イヴォークは、12か国の女性モータージャーナリストが選ぶ2012年ウィメンズ・ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーで1位に輝いた。悪路走破性が自慢の四輪駆動車でこれほどデザインが評価されたクルマはないのではないか。そして男の目から見ても、あでやかで魅力的な四輪駆動車だ。

(読売新聞)

http://www.landrover.com/jp/ja/rr/range-rover-evoque/

 


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