2012/06/23
変態濃度MAX!? ポルシェ911カレラ試乗~伊達軍曹
「格闘技世界一」を決めにくいのと同様、「世界一のクルマ」というのもなかなか決定させづらい。前者はルールの違い、後者は価値観の違いにより、10人いれば10通りの「世界一」が提案される可能性が高いのだ。
が、「精密感が世界一高い市販車は?」という問いであれば、自信をもって「ポルシェ911」と答える。仮に20年以上前の「タイプ930」であっても、その精密感と剛性感は凡百の2012年式新車をはるかに上回る。これほどまでに精密な市販車を作るシュトゥットガルトのドイツ人とは、わたしが思うに重度の自動車変態だ。
その自動車変態らが作る最新作が、またその「変態濃度」を上げた。ここに紹介するタイプ991こと最新のポルシェ911だ。
エンジンが水冷化された直後のタイプ996初期モデルこそ、その精密感に若干の陰りも見られたが、後期モデルからは完全に「いつものポルシェ」に戻った。そして後のタイプ997では「もうこれで十分以上でしょ!」という高みに達した。
が、シュトゥットガルトの自動車変態は「まだまだ足りないぜ!」と思ったらしい。最新のタイプ991では排気量のダウンサイジングや直噴化、アイドルストップなど、いわば世間の空気に迎合したかのような改変ポイントが目立つわけだが、それはあくまでも表向きの話だ。ポルシェ911の本質である「爆発的に走る」「鬼のように曲がる」「止まれと言われれば路面に爪を立てた感じで止まる」という3要素。そしてそれら動作を圧倒的な精密感を感じさせながらやってのけるという本筋は、「もうこれで十分!」と思われたタイプ997後期をちょっとずつ、しかし確実に、すべての点で上回っている。なんてこった。
タイプ991の全性能の解き放つことは、日本の公道では完全に無理だ。だが、シュトゥットガルトの愛すべき自動車変態たちが仕上げたその超絶精密っぷりは、60km/h程度でもビンビンに感じることができる。そして、それにシビれることができるのだ。
(ホビダスオート)