2012/01/10
発表目前のジュリエッタに初乗り!
|どんなクルマ?|
アルフィスタが長年待ち続けた、アルファ147の後継にあたる5ドアハッチバックモデル。フィアット・ブラーボ、ランチア・デルタとプラットホームを共有するが、ブラーボ=標準車、デルタ=高級車、そしてジュリエッタ=スポーティさを備えたプレミアムカーということで、すみ分けがなされている模様。日本へは2010年の夏にお披露目が行なわれているが、どうやらATモデル(ツインクラッチのTCT)設定の問題で遅れていたと聞く。しかし1月よりようやく、1.4Lターボ+TCT及び1.75Lターボ+6速MTの導入が始まることとなった。前者はベースモデルとなる「スプリント」(16インチ)と豪華装備の「コンペティツィオーネ」(17インチ)として、後者は最もスポーティな「クアドリフォリオ・ヴェルデ」(18インチ)として発売される(すべて右ハンドル)。ただし今回は正式発表前に許された試乗ということで、価格の情報がないことをご了承頂きたい。
|良いところ|
走りのテンポがいいこと。死ぬほど速くはないが、速く走りたくなる、乗り手を元気にさせるという、実にイタリア車らしいクルマだ。全体的に質感が高くしっかり感があり、クルマとしての基礎能力の高さが伺える。こう書くと誤解を招きそうだが、実にフィアットらしい「普通のよさ」を随所に感じることができた。そこに加わったアルファロメオらしさは、デザインと走り。まずフロントマスクは好き嫌いが分れそうだが、リヤまわりの彫刻的な造形は実に芸術的だ。それに気がつくと、フロントフードの彫りの深さに気が付き、フロントマスクもだんだん好きになってくるから不思議。今回3グレード全て乗れたが、やはりタイヤサイズと銘柄の兼ね合いもあり、18インチのクアドリフォリオ・ヴェルデが峠では一番パフォーマンスが高かった。しかし毎日乗るならベースのスプリントで十分。持っているだけで生活が明るくなるクルマである。
|気になるところ|
これまでのイタリア車を振り返れば、これから書くことは重箱の隅。それだけ十分なクオリティを感じた。これらが気になる方は所有しないほうがいいと思うが、一応書いておこう。まずアイドリングストップの制御が、まだまだ完璧じゃないこと。TCTでDやRレンジに入れた時、繋がるまで若干タイムラグがあること。やっぱり顔のデザインに好き嫌いが分かれること。アルファ156や147はぱっと見のカッコよさがあったが、これは周囲へのアピールという意味では若干地味? アウディやBMWも最近は派手になってきたので、これでは「ツウ好み」になってしまいそうでもったいない。まあ156や147に関わったデ・シルヴァも今やVWグループなので、仕方ないが……。しかしそういったスター不在でもこれだけのものを作り上げる、イタリアンデザインの底力を感じさせたのも事実である。あと、音がアルファロメオっぽくないと言うか、普通なのはちょっと気になった。
|ライバルは?|
ドイツ車勢ではメルセデスのBクラス(どちらかと言えば背が低くなる次期Aクラス)、BMWの1シリーズ、アウディA3、フランス勢ではプジョー308、シトロエンC4、ルノー・メガーヌと、まさに群雄割拠となるこの輸入車5ドアハッチバック・クラス。ジュリエッタの価格は300万円代と噂されるが、となると価格では200万円台が中心となるフランス車に完敗。ドイツ車勢とガチンコとなる。ただ競争力を高めるための「飛び道具」が不足しているように思える。アルファロメオのブランド力で、どこまで勝負できるか……。ルノーがメガーヌRSに特化しているように、思い切ったマーケティングにも期待したいところ。ただインポーターにとってもディーラーにとっても待望の1台であり、MTだけで先走って発売しなかった「我慢」には拍手したい。
|総合評価|
結論から言うと、個人的に「欲しいクルマ」となった。普段ランチア・イプシロンに乗っているが、次のステップとして候補となってくることは間違いない。実はアルファ156、147オーナーにも同じことが言えて、次に乗りたいクルマがないという声をよく聞く。そういった方々にぜひオススメしたいし、フィアット500で初めてイタリア車に乗り、イタ車に免疫ができた卒業生にもちょうどいい1台と言えよう。歴史を紐解けば、かつて1950~60年代を思い出させる「1750」のエンジンを買うことは興味深い行為だが、鼻先の軽さやバランスのよさを考えると、1.4Lのスプリントがベストバイに思えた。実はこの感覚、147に初めて乗った時のそれに似ていて、クルマとしての楽しさ=アルファロメオらしさは健在であることを思い知った。例えは悪いが「ぱっと見が美人の妻」はすぐ飽きるけど、「実は気が付けば美人な妻」はじわじわと惚れる。ジュリエッタはそういうクルマ。どうか第一印象で判断せずに、まずは実車をちゃんと見ることから始めてほしい。
(ホビダスオート)