2010/05/25
ポルシェ カイエン 試乗レポート【後編】(2/4)
シンプルなハイブリッドシステム
カイエンSハイブリッドのエンジンルーム。
3.0リッターV6直噴には低回転域のトルク特性に優れる
スーパーチャージャーが組み合わされているが、
ポルシェはこの理由についてハイブリッドとの相性の良さ
と説明している。
ルーツタイプのSCユニットもまた、シリンダーバンク間に
収められている。
8速ティプトロニックSはHVのみが専用設計で、エンジン
とトランスミッションの結合部分に15cmほどの厚みの
ハウジングを設け、その中にモーターや油圧制御の
断続クラッチを収めている。
8速ステップATのトルクコンバーターはそのまま生かされる。
カイエンSハイブリッドを走らせて次に感じるのが、
エンジンに切り替わり加速していく時の違和感のなさだ。
これはエンジン/モーターの切り替え時の違和感ではなく、
アクセルを踏む右足と駆動/ 加速が確かにリンクしている、
という点での話だ。
例えばライバルのレクサスRX450hが採用するTHSIIは
複雑な動力分割方式を用い、電気駆動の割合も多いが、
そのためかアクセルを踏み込んでも右足と駆動/加速の
リンクにリニア感は薄い。
もっともそれが新たな感覚、といえばカイエンSハイブリッド
の感覚は古いとも言えるのだが、同時にそこには、
これまでの自動車と変わらぬ“あの感覚”がちゃんとある、
ともいえる。
ポルシェがVWとともに開発したハイブリッドシステムは、
トゥアレグ・ハイブリッドと同様で、アウディが開発しS4など
にも搭載される3.0リッターのV6スーパーチャージャー
(333ps/44.9kgm)に、やはり新たな8速のティプトロ
ニックS(トルコンAT)を組み合わせる。
が、ハイブリッド用は他の8速ATと違い、アシスト時や
回生モード時の高負荷に大パワーの伝達を必要とするため、
2つのオイルポンプでオイルフローの増加に対応する。
そしてこのエンジンとトランスミッションの間に、クラッチと
モーター(47ps/30.6kgm)を挟み込む仕組みを採用。
バッテリーはトゥアレグ・ハイブリッド同様に本来スペア
タイヤを収納する場所にサンヨー製のニッケル水素
(288V、1.7kW/h)を収める。
システムはトヨタTHSIIに比べシンプルな構造だ。
こうしたハイブリッドの方式をどう呼ぶかは特に最近
意見が別れるところだ。
トヨタは電動駆動の割合が強いものをフル(ストロング)
ハイブリッドと呼ぶため、それに則って言うとクラッチを
持つとはいえモーターひとつでアシスト的に走行を賄う
この方式はマイルドハイブリッドだろう。
が、作動でいえばモーター走行の有無でフル/マイルド
を分ける呼び方もあり、ポルシェは後者を採用する。
よってこの方式をポルシェは、
パラレル式フルハイブリッドと呼ぶ。
カイエンSハイブリッドはエンジンとトランスミッションの
間にあるクラッチの作動によって、
モーターのみ、エンジン+モーター、エンジンのみといった
モードを作り出す。
特徴的なのは走行中にクラッチを積極的に作動させ、
なるべくエンジンを停めること。
156km/h以下までならアクセルをオフすると途端に
エンジンを停める辺りが自慢だ。
これをしてポルシェは「セーリング」と呼ぶ。
ちなみにVWトゥアレグ・ハイブリッドは同様の作動を
「コースティング」と呼ぶ。
が、感じるのはそうしたモードより何より、
先に記した違和感のなさだ。
(カービュー)