2010/05/27

ポルシェ カイエン 試乗レポート【後編】(4/4)




ポルシェの意地を感じる



F1由来のKERS技術である、化学バッテリーを使わない
フライホイールジェネレーターを搭載した911GT3Rハイブリッド。
前車軸に搭載された二基のモーターでパワーブースター的
に加速の立ち上がりをアシストする。



918スパイダーはパラレル式ハイブリッドシステムを搭載。
バッテリーはリチウムイオン電池で、前後にモーターを持つ。
プラグインHV機能も持つ。
最高速度320km/h、0-100km/h加速3.2秒をマークしつつ、
欧州複合サイクルモードで3L/100kmの燃費を誇るという
先端技術のオンパレードのようなコンセプトモデル。
ボディは軽量なCFRP製だ。


 実際に走らせると、確かに重みはシリーズ中最も強い。

 4WDもこのハイブリッドとディーゼル搭載モデルのPTMは
電子制御アクティブ4WDではなく、セルフロッキング式
センターデフによるフルタイム4WDで通常は前60%、
後40%の駆動力配分だが、前後軸の回転差を感知して
先のセンターデフが作動する仕組み。

 PTVplusは装備されないため、Sやターボほどの
身のこなしはない。

 が、それでも先代カイエン以上に走り、ハンドリング
にもさしたる不満を感じないのは軽量化が効くからに
他ならない。

 しかも重みこそあれ、しっかり、がっしりしたものが
違和感なく動く、この感覚こそ全てのポルシェに通ずる
感覚ではないか? と思えたのだ。

 そう、カイエンSハイブリッドから見えて来る「らしさ」の
答えとは、ハイブリッドであってもなお“ポルシェの名を
冠する自動車に相応しい走りか否か”ということ。

 そのためにまずドライブトレーンでは先に記した違和感
のない加速どころか、速さや気持ち良さを失わないだけの
動力性能を実現。

 そしてハンドリングにおいてもハイブリッド化による重量増
はもちろん、環境性能の名の下にフィーリングを悪化させない
術を施している。

 そこにはまず、1台の自動車として、1台のSUVとして、
そして1台のポルシェとしての走りが作り込まれている。

 つまりハイブリッドという技術を付与してもなお、
ポルシェが求める自動車としての走りの基本
(これはこれで相当に高レベル)を崩さぬ努力が
なされている。

 そう考えると僕は、このカイエンSハイブリッドこそ最も
“ポルシェ度”を感じる1台と思えたのだ。

 それは言わば、意地とも思える。

 ハイブリッドである前に、ポルシェである、という。

 もっともそうした想いは既にポルシェ自身が言葉にしている。

 3月のジュネーブにおいて、“918スパイダー”
“911GT3Rハイブリッド”“カイエンSハイブリッド”をお披露目
した時からそれは使われていた。

 “より少ない燃料でより大きなパワー、より高い効率と
より低いCO2排出量を掲げる”という新たなフィロソフィーだ。

 先に記したようにポルシェは今、思想や哲学すら
進化させている。

 そしてこれをして
“ポルシェ・インテリジェントパフォーマンス”という。

 なるほど納得、の答えがそこにある。

 つまりカイエンSハイブリッドは“ポルシェとして”の
ハイブリッドであり、そのパフォーマンスの実現のしかた
が知的なのだ。

 「最新のポルシェは最良のポルシェ」というフレーズ
があるが、僕はむしろ最新のポルシェとは、その時代の
最良のインテリジェンスで築かれるパフォーマンスを
持つものなのだと思えた。

                       (カービュー)


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