2011/12/05

試乗レビュー:ランドローバー イヴォーグ


レンジローバー・シリーズのニューモデルが「イヴォーク」だ。今までのランドローバーやレンジローバーとは異なるユニークなスタイリングだが、本格的な4WD性能に変わりはない。













コンセプトカーがほぼそのまま市販車に。

 イヴォークのベースとなったのは2008年のデトロイトショーでお披露目されたLRXコンセプト。そのスタイリングに、兄レンジローバー・スポーツのときのレンジストーマー以来となる衝撃を受けた人は多かったようだ。3ドアのスタイリッシュなボディはあまりにもセンセーショナルだった。
 そして反響が大きかったのか、ほとんどそのままのカタチで昨年パリサロンで発表。この夏、リバプールでの国際試乗会に至った。デザイナーは当初から手掛けてきたゲリー・マクガバン氏。フリーランダーもそうだが、先般のフランクフルトショーでは次期ディフェンダーを思わせるDC100というコンセプトモデルを制作した。ひとことでいうなら、レンジローバー伝統のデザインキューを散りばめながら新たな世界を表現している。
 で、そのパッケージングは、ご覧頂ければわかるようにヴォーグやスポーツよりもグッと小さい。4355~65mmの全長はBMW X1やアウディQ5より短い。またルーフも低く、これまでのランドローバー的オフローダーとは180度異なる都会的でスタイリッシュな造形だ。












クーペ風のボディは3ドアと5ドアを設定。

 インパクトあるエクステリアだが、よく見るとフロントグリルやボンネットの形状、それにボンネット先端の「RANGE ROVER」ロゴがファミリーであることを物語る。全体的なプロポーションは違っても、ヴォーグやスポーツの弟分であることは一目瞭然だ。
 だが、後方へ絞り込まれるようなサイドビューは、まさにクーペ的シルエット。スクエアを基調とした兄たちとの最大の違いは、そこであることは間違いない。では、インテリアはどうかというと、当然、新しい試みが散りばめられている。個人的に「風呂屋の番台」と表していたレンジローバー・シリーズのコマンドポジションはその姿を潜め、シート高はパッセンジャーカー的となった。ドライバーの目線は低く、サイドシルも高く感じられる。
 また操作系では、お馴染みのテレインレスポンスがダイヤル式からボタン式に変更されている。あのタッチが好きではあったが、コンソールから突起物がひとつなくなったという面からは進化したともいえるだろう。ボディタイプは3ドアと5ドアの2種類。デザイン的なインパクトは断然3ドアだが、5ドアだからといってそれが破綻しているようなことは一切ない。













スタイリッシュでも必要十分な使い勝手。

 いくらスタイリッシュになろうと、イヴォークはある法則を守っている。それはオフロード・ジオメトリー。つまり、デザインが優先されているように見えても、兄貴たちと同様のオフロード走行の性能を保持するために、アプローチアングルやブレークオーバーアングル、ディパーチャーアングルはしっかり確保されている。よって、ルーフを低くするためにボディを薄くするよう心掛けたのだ。
 具体的には室内床を下げてヘッドスペースを稼いでいる。ヘッドクリアランスが少なくなる分、ヒップポイントごと下げるという手法を取っている。したがって、天井が低いとか圧迫感があるといった感じは受けない。3ドアのイヴォークのリアシートでも、BMW 3シリーズ・クーペよりヘッドクリアランスは広いそうだ。
 昔のクルマならともかく、全方向で欠点をなくさなければならないのが現代車である。したがって、カーゴルームも特に狭いという印象はなかった。容量はBMW X1のそれとほぼ同じくらい。ベビーカーをたたんでしまうこともできるし、ゴルフバッグもひとつならフルサイズが横置きできる。ちなみに、スペアタイアは標準サイズが床下に収納される。

直4のガソリンとディーゼルを搭載。

 エンジンは、2L直4ターボのガソリンと2.2L直4ターボのディーゼルのふたつ。当然、ディーゼルに対する規制値が高い日本へはガソリンのみの販売となる。
 240psを発揮するガソリンエンジンはツイン可変バルブタイミング機構が組み込まれ、ターボが働き出す前の低回転領域からトルクを発生させる。最近はワールドスタンダード的ともいえる“バルタイ&ターボ”だが、もはやこのクラスではなくてはならない存在だ。しかも、エンジンは直噴式でもあることから、省燃費も期待できそうなプロファイルだ。
 なので、実際にクルマを走らせてみても、その滑らかな走り出しは納得する。これまでの概念ではV6が積まれていても不思議ではないが、それも必要を感じさせない扱いやすさがある。また、モノコックボディが快適な乗り心地も演出する。目隠しして助手席に乗せられたら、背の高いクルマとは気づかないだろう。
 ところで、イヴォークはマグネライドを採用している。電気信号でダンパーの粘性を変え減衰圧を調整するそれは、まさに高級車の証し。その意味では、サイズはコンパクトでもレンジローバー家の一員であることはしっかり主張されている。














日本では東京モーターショーでお披露目。

 英国での試乗会でも、海の向こうの自動車メディアを見てもそうだが、イヴォークの反響は大きい。伝統を散りばめた新たなデザインはどうやら大成功のようだ。ヨーロッパでは夏から販売が開始され、好調の出だしだと聞く。
 では、日本での展開はというと、今年12月に行われる東京モーターショーでお披露目され、バリエーションや価格も発表される模様。そして来年春には販売がはじまり、順次デリバリーが開始される。その頃になればヨーロッパでの納車も一段落するから、日本のオーダーにも柔軟に応えてくれるかもしれない。
 ただ、購入を決意してからのボディカラー選びは相当苦労するかもしれない。実はモーターショーでも、当初はオレンジやライムグリーンなどポップな色合いのモデルが飾られていたが、年初のデトロイトでは白、この間のフランクフルトでは渋いダークカラー系が展示されていた。で、そのどれもが似合っていたのだからやっかいだ。それとドアの枚数とグレードも悩みそう。
 もっとも、どれを選んでも目立つことは確かだ。インパクトの大きいデザインだけに、まわりの視線を集めるのは必至である。


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