2009/07/02
カー雑誌 生き残り戦略
カー雑誌の発行部数が減り続けている。若者の「クルマ離れ」に
加え、インターネットなどで手軽にクルマの情報が手に入るように
なったことが響いているようだ。
しかし、日本のクルマ文化を支えてきたカー雑誌が衰退してしまう
のは寂しい。「あの手この手」の生き残り戦略を探った。
書店の自動車専門誌コーナー。出版社は部数
減少に歯止めをかけようと懸命だ
(東京都千代田区の「丸善丸の内本店」で)
ジャンル絞り創刊
三栄書房の「スペシャルカーズ」
カー雑誌「ゲンロク」などを発行する三栄書房は2008年12月、
輸入車のチューニングやドレスアップを取り上げる「スペシャル
カーズ」を創刊した。
チューニングとは、アフターパーツ(後付け部品)でクルマを自分
好みに仕上げること。外観を個性的にしたり、走行性能を高めたり
できる。愛好家も多いが、専門の雑誌はこれまで多くなかった。
新雑誌では、パーツ選びのポイントや各地の専門店などを紹介。
輸入車ユーザーのための情報をふんだんに載せている。
永田元輔編集長は「読者の好みは多様化している。ジャンルを
絞り、詳しい情報を載せなければいけなくなっている」と解説する。
当面は隔月で発行するが、将来的には月刊誌とすることも検討し
ている。
ネットと連携
ネコ・パブリッシングの自動車専門サイト
「ホビダス・オート」
ネコ・パブリッシングは、雑誌とインターネットの連携を図っている。
雑誌では、愛好家がこだわる自宅のガレージを紹介する季刊誌
「ガレージ・ライフ」や、自動車模型の月刊誌「モデル・カーズ」など
を発行。特定の読者層をターゲットにする。
同時にインターネットサイト「ホビダス・オート」も運営。新型車や
モータースポーツなどに関する速報を提供している。笹本健次社
長は「雑誌では詳細で専門的な情報を提供し、ネットでは速報性
が重要な情報を流す。使い分ければ、共存が可能だ」と説明する。
同社はサーキットでの走行会や公道を走るツアーなどのイベント
も企画。固定読者とのつながりを大事にすることで、自社の媒体
を長続きさせたい考えだ。
身近な話題多く
ネコ・パブリッシングの「ガレージ・ライフ」
専門性の高い情報で生き残りを目指す雑誌に対し、幅広いクルマ
情報を扱う総合誌はどう対抗するのか。
出版科学研究所によると、発行部数(1号あたり)の多いベスト3は
講談社ビーシーの「ベストカー」、交通タイムス社の「CARトップ」、
八重洲出版の「ドライバー」で、いずれも総合誌だ。
その中で、「ベストカー」は月2回の発行で毎号、30万部を超える
発行部数を持ち、根強い人気がある。新型車のスクープ情報が充実
していることで知られる。勝股優編集長は「専門的な情報より、身近
な話題を多く取り上げるようにしている」と強調する。
乗り心地に的を絞ったテストを行ったり、愛車を長持ちさせるための
メンテナンス法を取り上げたり、ドライバーなら誰もが気になる情報を
提供することを目指しているという。根っからのクルマ好きだけでなく、
幅広い層に受け入れられる誌面づくりを心がけ、ファンを維持している
ようだ。
各出版社は部数減に歯止めをかけようと懸命だ。その結果、いろい
ろな工夫が凝らされ、クルマの情報もあらゆる角度から掘り下げられ
ている。かつて、クルマにあこがれて買ったカー雑誌を今、もう一度手
にしてみるのも悪くない。
発行部数ピークの半分以下
講談社ビーシーの「ベストカー」
民間調査会社の出版科学研究所が出した2009年版の出版指標
年報によると、自動車雑誌の発行部数のピークは1995年。年間で
1億5808万冊が発行された。国民1人が年に1冊以上読んでいた
計算だ。
しかし、その後は毎年のように減り、08年には7452万冊とピーク
の半分以下に落ち込んだ。特に、モータースポーツ関係の雑誌で苦
戦が目立つという。
出版指標年報のデータから計算すると、国内の雑誌全体に占める
割合も95年の3%から、08年には2%に下がった。全般的に部数が
減っている雑誌の中でも、自動車雑誌の落ち込みぶりが目立ってい
るようだ。