2010/05/24
ポルシェ カイエン 試乗レポート【後編】(1/4)
”ポルシェの”ハイブリッドという衝撃
ハイブリッドのロゴはフロントフェンダー脇(左右)に小さく
あしらわれるが、リアエンブレムにはカイエンSとのみ
表記されるから、識別ポイントは意外なほど少ない。
ハイブリッドの場合ATセレクター手前のスイッチには
若干の違いがあり、E-POWER(EVモード)が選択可能。
その他のモデルではこの位置に、アイドルストップの
キャンセルスイッチが配置されている。
また、エアサスの車高調整やオフロードモードの
セレクターは装備されない。
「ポルシェがポルシェであるための“らしさ”とは何か?」…
そう思いならがカイエンSハイブリッドを踏んでみる…。
すると、モーターによる走り出しから、エンジンへと駆動が
スイッチして、爽快な違和感のない加速が生まれた。
このクルマの答えが少し見えた気がした。
見た目は他のモデルと変わりはない。
最も大きな違いといえば、フロントフェンダーに小さく控え目に
配された「Hybrid」のエンブレムくらい。
室内も同様の印象で、違いといえばセンターコンソールに
据えられたモニターに、トヨタのそれに似たエネルギーフローや
燃費情報が示される程度だ。
だがそれは「あえて」なのだろう。
つまりハイブリッドが特別ではなく、
ラインナップのひとつ、という意味において。
最初に感動を覚えるのはその静寂だ。
もちろんモーター走行ゆえの静けさだが、
それ以上に心に響くのは今、自分が運転しているのが
「無音のポルシェ」であるという事実だ。
しかも、センターコンソール上のE-powerスイッチを
押せば、バッテリー残量次第でEVモードをより積極的
にも使える。
走り神ともいえるポルシェが無音で走る様は
あまりに衝撃的で、時代の変化はもちろん、
思想や哲学すら進化しつつあることを感じずに
いられない。
ハイブリッドはご存知のように、
我が日本のトヨタが初めて市販を行って既に
10年以上が経過している。
当時の欧州メーカーは、この技術を鼻にも
かけなかったという事実が歴然としてある。
しかしながら欧州勢の多くはここ数年で
ハイブリッドの市販や開発をアピールし始めた。
そしてアッという間にここまで来るのだから、
したたかだ。
そんな手腕の巧みさにも驚くが、
それより何より「ポルシェのハイブリッド」という
インパクトは、自動車史上あまりに大きい。
もっともポルシェは今から110年前に、
世界初のハイブリッドともいわれるローナー・ポルシェ
“Semper Vivus”を世に送り出してはいる。
しかし、現代に改めて送り出された
“ポルシェの”ハイブリッドという存在の衝撃は
ずっと大きいはずだ。
(カービュー)