2009/10/29
東京モーターショー(下) 走りの魅力 若者つかめ
コンセプト」は跳ね上げ式のドアが特徴だ
東京モーターショーで、トヨタ自動車やホンダなどが、エコカーと並んで力を入れて
いるのが「走りの楽しさ」をアピールした新型スポーツ車だ。
トヨタ「FT―86コンセプト」は、1983年に発売されてヒットした「カローラレビン
(車両型式番号AE86・通称ハチロク)」を連想させるスポーツ車。排気量2リットル
の水平対向エンジンを搭載、低重心のシルエットにこだわった。
ホンダのスポーツタイプのハイブリッド車「CR―Z」も83年に発売したスポーツカー
「CR―X」にあやかった名前のスポーツ車。
富士重工業が試作したハイブリッド車「スバル ハイブリッド ツアラー コンセプト」
は跳ね上げ式のドアが見る者を引きつける。
各社には若者の車離れに歯止めをかけたい狙いがある。日本自動車工業会が3
月にまとめた大学生の「興味がある製品・サービスランキング」調査で、車はパソコ
ンや携帯電話などに大きく差をつけられ17位にとどまった。
ガリバー自動車研究所の鈴木詳一所長は「車を移動の道具と割り切り、お金をか
けない若者が増えた」と指摘する。
トヨタは「若者の車離れというが、離れていたのはメーカーだった」(豊田章男社長)
との反省から、FT―86で、近年のスポーツ車としては購入しやすい「300万円を
切る価格」を目指す考えだ。
それでも83年の発売当時に大卒男子平均初任給(月額13万2200円、厚生労働
省調べ)の約10倍(132万~154万円)だった「ハチロク」と比べ、割高感は残るか
もしれない。日本経団連によると今春の大卒事務系の平均初任給は約20万8000円
だった。
今年8月の完全失業率は5・5%と前月から0・2ポイント改善したが、若年層(15~
24歳)は9・3%と高い。若年層の就業者は非正規従業員が46・4%(2008年)を
占め、若者を取り巻く経済環境は厳しさを増している。
10月4日、東京・お台場の駐車場を、ゲームやアニメの美少女キャラクターが描き
込まれた車やバイク約800台が埋め尽くした。「痛車(いたしゃ)」と呼ばれる改造車のイベン
ト「第2回痛Gふぇすた」だ。
エアロパーツを装着したスポーツ車もズラリと並んだ会場は、約1万4000人の若
者たちでにぎわったが、「カッコいい新車は高くて買えない。皆、中古を改造している」
との声も聞かれた。
若者が新車を買う気になるには、メーカーが「安くてカッコいい」車を提案することも
必要なようだ。