2011/09/20
シトロエンC4
7年ぶりのフルモデルチェンジ
フランス車のシトロエンC4は、フォルクスワーゲンのゴルフに対抗する位置づけのハッチバック車だ。両車は、ほぼ同じ車体寸法である。そのシトロエンC4が、7年ぶりにフルモデルチェンジをして2代目となった。
前型の初代C4は、新型C4と同じ4ドアハッチバックのサルーンの他に、2ドアハッチバックのクーペもあったが、新型は4ドアハッチバックのみである。新型は全長がやや伸びたものの、そのほかは初代とほとんど変わらない車体寸法だ。全長が長くなった分は、荷室の拡大に活用されている。スタイルは、前型が丸みを帯びたデザインであったのに対し、新型はやや角張った印象を与える。
フランス流運転に適した発進加速
日本に輸入されるのは、セダクションとエクスクルーシブと名付けられた2車種で、その両方に試乗の機会を得た。どちらもエンジンは、ドイツのBMW社と共同開発による排気量1600cc。セダクションは4速オートマチックトランスミッションとの組み合わせ、エクスクルーシブのエンジンはターボチャージャーで過給された高出力型となり、トランスミッションは6速の自動クラッチ式である。
昨今のヨーロッパ車のエンジンは、小排気量+ターボチャージャーといったダウンサイジングが時代の流れで、新型シトロエンC4のライバルともいえるゴルフは、さらに排気量の小さな1200ccエンジンで走らせる。それでいい走りを見せる。
新型シトロエンC4のセダクションは1600ccで過給なしとはいえ、1310kgという車両重量にも不足はない。特に発進の様子は、トランスミッションのギア比の関係にもよると思うが、驚くほど勢いが良い。パリなどで運転してみると、フランスの人々の運転は、出足の良さを生かした乗り方をする。そんなフランス流の運転に適した発進加速と感じた。
一方で、ゴルフが7速のトランスミッションであるのに対し、新型C4はなお4速のままだ。国産車でも、6速などが当たり前になってきている今日、そこにメカニズム的な物足りなさを覚えるかもしれない。だが試乗をしてみると、4速であることの不具合はほとんど感じない。唯一、高速道路を100km/hで走行した際に、エンジン回転数が多段トランスミッションより高めに保たれるのはやむを得ない。このため、長距離移動での燃費には差が出るだろう。
ゆったり穏やかな乗り心地
新型シトロエンC4の乗り心地は、フランス車らしいゆったりとした穏やかさが特徴だ。それでいて、カーブなどでは踏ん張りの利く、しっかりした手ごたえも残す。運転席からの見晴らしの良さは、新型C4の特筆すべき点の一つと言える。ミニバンのC4ピカソほどではないものの、左右へ目を向けたときの開放感が素晴らしい。ゆったりとした乗り心地とあわせて、その開放感によってのんびりドライブに出かけたい気分にさせる。
試乗したセダクションには、パノラミックガラスルーフが装着されていた。そこから光が差し込み、また室内の淡いベージュの内装も手伝って、晴れ晴れとした気分にさせる。後席にもゆとりがあり、仲間とワイワイ言いながら出掛けたくなるクルマでもある。
ターボエンジンを搭載したエクスクルーシブは、セダクションのゆったりとした気分とは違った趣をもつ。ターボエンジンの加速はさらに勢いをまし、ハンドル裏に設置されたパドル式レバーによるマニュアル操作でギアチェンジをしながら気持ちよく速度にのせていくと、たちまち法定速度を超えそうになる。一般公道ではもてあますほどのパフォーマンスだ。乗り心地も硬くなっていて、サーキットの滑らかな舗装路を走らせた方が楽しめるのではないかと思った。
新型シトロエンC4の魅力は、セダクションに詰まっていると感じた。そして、荷室容量が大きくなったのを幸いに、長距離ドライブを計画してみたくなる。そんな人生のゆとりを求めたくなるクルマだ。
(読売新聞)
http://c4.citroen.jp/