FR車への哀愁
2010/12/09 ちょっとしたお話
世界最速の陸上動物は、
時速105キロで走るチーターと言われる。
四足動物では馬や犬だって人間より速い。
かれらに共通するのは、
その発達した大腿骨だ。
強靭な後ろ足で駆けて加速し、
前足で舵を切る。
自動車にもその発想が採り入れられた。
後輪駆動、
いわゆるFR(フロントエンジン、リアドライブ)である。
エンジン動力を後輪に伝え、
前輪の操舵で進行方向を決める。
これが基本形だった。
だが、その後室内空間を広げるのに
有利な前輪駆動、
FF(フロントエンジン、フロントドライブ)が普及。
横置きエンジンなら車体長を短縮でき、
室内長を拡大できる。
荷重が前輪に集中するため雨や雪の時の
走行安定性も増す。
部品点数も減らせるなど多くの利点があり、
低価格化と軽量化の流れに乗って
今や主流となっている。
一方で、前輪に荷重がかかりすぎるため、
カーブで車体が外にふくらもうとする
アンダーステアが出やすくなり、
取り回し性もFR車に劣る。
FF全盛の現代でも、
スポーツカーなど“走り”を強調する車に
FRを求める声が依然多いのもうなずける。
ある新車ディーラー役員との雑談での話題。
某氏が言うには
「最近の車はデザインが良くない。
FFだから腰の位置が高い」。
トヨタ「マークX」、日産「スカイライン」、
ホンダでは昨夏生産が終了した
スポーツカー「S2000」など、
いずれも車高は低く、
某氏いわく「車らしく格好いい」。
燃費が良く低価格が人気の小型車は
ほぼすべてFFで腰高。
これらに走りは不要かもしれないが、
四足動物の俊敏な動きを見ていると
FR車が少ないことへの哀愁を感じる。
(日刊自動車新聞より)