「高血圧は薬で下げるな!」(角川oneテーマ21)
2010/09/03 ちょっとしたお話
血圧を考える(赤尾清剛氏のコラムから)
「高血圧は薬で下げるな!」(角川oneテーマ21)という本の内容の一部を紹介したいと思います。
薬の臨床的な有効性を確かめるもっとも適切な方法は、ランダム化比較試験であると考えられています。
それには
1. 一定の人数を必要とする
2. 無作為に2群に分ける
3. 一方の群には効果を確かめたい薬を、もう一方の群にはプラシーボ(偽薬)を投与する
4. 一定期間、経過を観察してその間に起きた不都合な病気(死亡)の割合を比較する
という4つの条件を満たして臨床試験を行います。
効果確認には大規模で長期の実験が必要ですが、日本では高血圧患者を対象にした大規模で完全な「ランダム化比較試験」はなく、小規模で不完全な臨床試験が一つあるだけです。
この試験の結果を簡単に示すと
1. 降圧剤を使用した人とプラシーボ(偽薬)を使用した人との間で、死亡率にも発症率にも統計学上有意な差は見られなかった
2. 癌の発生率は降圧剤を使用した群のほうが高かった
3. 循環器以外の病気に罹る確立も降圧剤を使用した群のほうが高い傾向にあった
4. 降圧剤で予防できるはずの脳梗塞でさえ、降圧剤を使用した群に多い傾向にあった
この結果から以下の重要な問題が考えられます。
1. 日本では、降圧剤の効果や影響に対するランダム化比較試験は殆どなく、疫学調査は少ないこと。またその結果が一般に公表されていないこと
2. 国内外の調査の結果にかかわらず、「高血圧治療のガイドライン」に従って治療が継続して行われていること
高血圧患者は全国で5千万人と推測されています。およそ40%の国民が降圧剤を内服しなければならないことになります。
多くの患者が内服する降圧剤に対して、精度の高いランダム化比較試験や疫学調査を繰り返し行うこと、そしてその結果が公開されることが求められるのではないでしょうか。
そのうえで、医師だけでなく、有識者を含めた会議で「高血圧治療のガイドライン」について議論し、決定してもらいたいと私は考えます。